研究課題/領域番号 |
19K03395
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20372576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | del Pezzo多様体 / ユニポテント代数群 / 森ファイバー空間 / 極小モデル理論 / Fano多様体 |
研究実績の概要 |
今年度はコロナの状況下で,対面式の議論は実施できなかったが,Zoomなどを利用したオンラインでの議論・討論を通して,研究課題に関する3つの国際共同研究を進めることが出来た.いずれも研究課題にある,シリンダーに関連する共同研究である.1つ目は『(1)次数が5のdel Pezzo多様体上のユニポテント構造』(Adrien Dubouloz, Pedro Monteroとの共同研究), 2つ目は『(2)次数が5のdel Pezzo threefold上の線形系の分類』(Adrien Dubouloz,長岡大との共同研究),そして3つ目は『(3)Fanoファイブレーションの間の双有理写像の分類』(Ivan Cheltsov, Adrien Dubouloz, Jihun Parkとの共同研究)である.(1)については,コロナ禍になる直前である2020年の3月に共同研究を開始していたが,2021年度になって漸く最終的な結果を得ることが出来た.現在,論文として公表する為に,執筆中である.(2)については,2021年度の秋頃に共同研究を開始したが,研究代表者もDubouloz, 長岡氏も,del Pezzo threefoldについては深い知識を有しているので,当初の予想より早く研究は進んでいる.実際に,この(2)の研究はある意味で分類問題であるが,分類自体は既に完全な形で完成をしている.現在は,(1)と同様,(2)も論文として公表をする為に現在,執筆中である.最後に(3)については,今年の1月になって新たに開始した共同研究である.まだ開始早々であるが,今年度中に共同研究者の3人は研究代表者のもとを訪問して,(3)についての共同研究を集中的に進展させる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題に対する進捗状況であるが,上の[研究業績の概要]の項目でも述べた様に,関連する3つの国際共同研究(1), (2), (3)について,(1),(2)については大幅に進展して,現在は論文としてまとめている段階である.(3)については,まだ共同研究を開始して2ヶ月程度であるので,研究自体は完了をしていないが,定期的に共同研究者全員でZoom経由で研究打ち合わせを実施して,少しずつ研究を進展させている.(1)の論文執筆は現在進行形であるが,7月頃辺りのarXivでの公表を予定している.(2)の論文執筆も現在進行形であるが,最初のバージョンは完成している.しかし思った以上にページ数が多くなってしまったので,現在は,いかにして議論の無駄を削ぎ落としながら,結果の本質部分は変えない様に論文を執筆するかに尽力している段階である.(3)については,今年度(2022年度)の主な研究テーマの1つになる.今年度はコロナの状況も幾分改善の兆しが見られ,国をまたぐ往来に関する規制も段階的に緩和されてきているので,(3)に関連をして,今年度は共同研究者と対面式の研究打ち合わせを行い,研究を大きく前進させることを期待している.
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今後の研究の推進方策 |
まず今年度(2022年度)の研究テーマの1つは,上記の(3)に関するものである.曲線上の射影直線によるファイブレーション間の双有理写像は,古典的に良く知られている.一言で言えば,そのような双有理写像は,基本変換の合成で表される.(3)の研究テーマは,この事実の高次元化である.曲線上の射影直線によるファイブレーションの部分を,曲線上のdel Pezzo曲面,またはdel Pezzo threefoldによるファイブレーションに置き換えた場合の,それらの間の双有理写像を分類するというものである.del Pezzo曲面によるファイブレーションの場合には,次数が4以下の場合には,自明な双有理写像しか存在しないということが,2001年のJihun Parkの結果により分かっているが,次数が5以上の場合には良く分かっていない.一方,del Pezzo threefoldによるファイブレーションの場合には,殆ど何も分かっていない状況である.研究(3)のメインテーマは,この曲線上のdel Pezzo threefoldによるファイブレーションについて,『(a) 次数が3以下の場合には双有理写像は自明なものに限られる』,一方『(b) 次数が4,5の場合には,非自明な双有理写像が存在する』という予想を解明することを目標にする.(a)については,ファイバーが非特異である場合には,既に証明は完成している.そこで今後は,ファイバーが穏やかな特異点を持つ場合の考察を進める.一方(b)について,次数が5の場合には"非常に沢山(非加算無限個)"の双有理写像が存在することは判明しているので,以降では主に次数が4の場合に,どの程度沢山の双有理写像が存在するのかについて,研究を進めていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度もコロナ禍の状況下にあり,本来であれば実施出来ていた研究打ち合わせに伴う海外出張などが皆無だった為,旅費による支出がゼロであった.これが,次年度使用が生じた大きな理由である.今年度は,コロナの状況が幾分改善されてきており,外国との往来に関する規制が緩和されてきていることから,海外出張などを通して,共同研究者のもとを訪問して,対面式の議論によって,研究課題の進展を一層加速させる計画である.
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