研究実績の概要 |
申請時の、研究計画調書 1.3 にターゲット、戦略、工程表を述べた。その中で (a) に挙げた孤立特異点の変形から生じる保型函数の研究が最も重要な主題であった。これに関して、2021年度公表の2編の論文 (1) Geometric Interpretation of Hermitian Modular Forms via Burkhardt Invariants, (2022 年、 Transformation Groups 誌、永野中行(金沢大)と共著) (2) On Kummer-like surfaces attached to singularity and modular forms,(2022 年、Mathematische Nachrichten 誌、永野中行(金沢大)と共著)で成果を発表し、さらに対面型研究集会において (3) 「Mark 付き K3 曲面族の GKZ 周期微分方程式的接近」の表題で、志賀が、主にこの論文の内容に関して講演を行なった。 この成果は、当初の計画とは異なる結論に至ったが、それは、基礎となる米国研究者の先行論文の結論に、誤りがあることを筆者が発見し、1年に渉るその訂正作業から新しい事実が見つかったためである。それは、既に塩田および馬正平によって知られていた、クンマー曲面の対合に由来する被覆関係の性質の大幅な拡張を導くものとなった。他の研究テーマに関しても (b) に関しては、すでに前年度に結果(*) An explicit Shimura canonical model for the quaternion algebra of discriminant 6 (2020, RIMS Kokyuroku 別冊)を得た。(c) に関しては、部分的な考察は積み上げたが、公表に値する成熟した結果には至っていない。今後の展開を図るつもりである。
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