研究課題/領域番号 |
19K03396
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
志賀 弘典 千葉大学, 大学院理学研究院, 名誉教授 (90009605)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | K3曲面 / 超幾何微分方程式 / 多変数保型形式 / テータ函数 / 複素鏡映群 |
研究実績の概要 |
事業申請書中の第1節にある「核心的問い」の前段及び1.3の工程表にしたがって研究の推進を行い、論文3編(掲載決定済みを含む)を発表し、シンポジウムにおける3講演を行った。これらは、後段の研究成果発表リストで示されるものである。 工程表では a), b), c), 3つの具体的ターゲットを挙げたが、本年度に於ける上述の成果は、主たる研究テーマとつながる a) に関するものである。 [論文 3 ] が主論文であり、[論文 2] は、主論文の結果を導くための並行論文である。それは、以下の意味である。主論文の基礎として用いる予定であり、研究者間では既成の事実とみなされていた先行論文の主張が誤っていることを発見し、別視点に立って、誤った先行論文の結論の修正及び、その証明を行った。同時に、この修正によって生じた、期待されていた結果との誤差は、2種の曲面族間の興味深い被覆関係を導くことを新たに発見したものである。[論文 1] は、数学会機関誌における論説論文であり、研究代表者が 46 年間追求してきたテーマに関する研究の総体を、周辺の研究者の得た結果も紹介しながら鳥瞰的に解説した。 [講演 3] は、[論文 3 ] に関わる超幾何微分方程式がどのように現れるかを GKZ 微分方程式系の視点から解説したものであり、[講演 1][講演 2] は、[論文 1] の内容の抜粋を海外の研究者に紹介したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトは一応R5年度をもって終了するが、工程表 に掲げた研究のターゲット a), b), c) それぞれにおいて、ほぼ目標が達成された。特に a) における成果は、今後進展するであろうK3 曲面の特性を用いた精緻な多変数保型形式論に於ける、重要な橋頭堡を築いたという意味がある。b), c) は総じて言えば、この構築された保型形式の数論的展開として捉えられる。b) は、難解な「志村虚数乗法論」において本質的な役割を果たしている“志村正準模型保型関数”の、現在得られている唯一の具体例を与える結果を得ることができた。一方 c) おいては、所期の結果には到達することができなかったが、今後の課題として何らかの新しい視点が必要かと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前段で述べたような観点に立って、本研究で得られた基本的な成果を起点として、今後は K3 保型形式として得られる精密な多変数保型形式の数論的な展開に目を移してゆくことが考えられる。 このような方向の研究は、進展の過程で新たな数学的新事実の発見を導くことも大いにありうると研究代表者は考える。 例えばガウスが18世紀に見ていた「算術幾何平均定理」、を高次元化する試みなどが日程に上がるであろう。 残念ながら研究代表者の所属機関は、高齢を理由に新たなプロジェクトの助成申請を許可していないので、この展開を自らの手で推進する可能性を絶たれているが、後続の研究者が新たな知見のもとで、斬新な研究成果が世に現れるものと信じる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由)コロナ禍等によって、海外で予定されていた研究集会が、中止及び延期になり、対面での討議の機会が失われたため。 使用計画)再開した海外を含む研究集会等に参加し、討議を重ねる予定で、そのための経費とする。所期の計画遂行のための計算機ソフトの購入等も見込んでいる。
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