研究課題/領域番号 |
19K03399
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳田 伸太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (50645471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 頂点代数 / 導来Poisson代数 / 超幾何関数 / Macdonald多項式 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究内容は主に4つある. 1. 2019年12月から行っていた, 頂点代数と導来Poisson代数幾何に関する研究. dg頂点代数及びそのBRST簡約の概念を導入し, それで得られる圏がMoore-Tachikawaシンプレクティック多様体とそのgluingのなす圏のカイラル化であることを示した. これは2020年4月にプレプリントとして発表し, 雑誌 Letters in Mathematical Physics にオンライン掲載された. 2. 2019年度に発表した幾何学的導来Hall代数に関する研究について, 代数学シンポジウムへの招待を受け, またセミナー講演を数回行った. これらを元にプレプリント "Geometric derived Hall algebra" を改訂中である. 3. 2020年10月以降, 名古屋大学の林正人氏と北海道大学の洞彰人氏とともに表現論・超幾何直交多項式・確率論・量子情報理論にまたがる共同研究を行い, 共著(arXiv:2104.12635) 及び単著のプレプリント (arXiv:2104.12966) にまとめた. 私の貢献は主に超幾何直交多項式に関する計算の部分である. 4. 2021年1月以降, 私が指導している名古屋大学の山口航平氏とともにKoornwinder多項式のパラメータ特殊化を研究し, プレプリント (arXiv:2105.00936) にまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に書いた4項目について, 項目1と2は前年度の続きであり, これらについては計画通り進んだ. 特に項目1については幾つか新しい問題が見つかり, 来年度の研究テーマにつながることになった. 一方, 項目3と4は計画になかった研究で, 特に3は全く予期していなかった共同研究である. そのテーマは私の専門分野外のものであったが, これまで私が研究経験を積んできた表現論と特殊関数に関する知見を活かすことができて, 結果的に問題を完全に解決することができた. また付随して新しい問題を見つけることもできて, 大変満足のいく共同研究になった. 項目4は指導学生との共同研究であり, 左程難しいことをしている訳ではない. しかし, Macdonald-Koornwinder多項式のパラメータの特殊化について, 既存の文献では整理されていなかった点を明確にすることができて, 一定の価値のある研究になったと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は主に以下の2つのテーマに取り組む. 1. 超対称性を持つ頂点代数層の頂点加群層について. 頂点代数の表現論はこれまでさかんに研究されていて, 例えばZhu代数と呼ばれる結合代数の表現論と等価であることが知られている. 超対称性を持つ頂点代数の表現論もそれと同じ方針の研究が進んでいる. 一方, N=2超対称性を持つ頂点代数はミラー対称性のような幾何学的な話題と関係している. そのような幾何学的な文脈では頂点代数層及びその大域切断の空間を使った研究がある程度進んでいるが, 表現論との関係はあまり明確でないと思われる. そこで超対称性を持つ頂点代数の層上の頂点加群層について, まずはZhu代数やC2代数に基づく研究を, 更に可能であれば頂点加群層のなす圏に関する現代的な表現論を展開する. 2. Macdonald双スペクトル問題と楕円可積分系について. Macdonald多項式はRuijsenaars-Macdonald差分作用素族と呼ばれる可換なq差分作用素族の同時固有関数である. この作用素族に関する双スペクトル問題は量子アフィンKZ方程式と関連して研究されており, 特に双固有関数の存在定理が知られている. 一方でGL型については双固有関数のq超幾何関数を用いた明示公式が知られている. 一般のルート系に関するこの双スペクトル問題を, 楕円曲線の直積であるAbel多様体上の有理型Dq加群で定式化し, 特に明示公式をGL型以外の場合についても導出することを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ情勢もあり出張費が一切使えなかった. 2021年度はオンライン研究集会「代数的Lie理論および表現論」を主催する予定で, その開催費用およびプロシーディングの出版費用に2020年度分の助成金を用いる予定である.
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備考 |
(2)は世話人をした研究集会のウェブページ
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