研究課題/領域番号 |
19K03400
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80409614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超幾何関数 / 超特異多項式 / ドリンフェルト加群 / 関数体の塔 / 周期 / 有限体 / モジュラー曲線 |
研究実績の概要 |
2019年度は以下の(1)(2)(3)(4)(5)を証明した.(1)(2)(3)は Ramanujan Journal にアクセプトされ,(4)(5)は論文にまとめている最中. (1)超特異楕円曲線をカウントする超特異多項式の「閉形式」はすでに知られている.ドリンフェルト加群は楕円曲線の関数体類似だが,超特異ドリンフェルト加群をカウントする超特異多項式の「閉形式」は知られていなかった.階数2の場合にそれを与えた.(2)階数3以上の場合についても超特異多項式の形をあるていどはっきりさせた.「閉形式」については現在研究中.(3)楕円曲線に対応する格子の「周期」はガウス超幾何関数を用いて書かれ,ガウス超幾何関数は超特異多項式と関係するので,「周期」は超特異多項式と関係することがすでに知られている.(1)の結果を用いて,階数2ドリンフェルト加群に対応する格子の「周期」を超特異多項式と関係させた. (4)漸近的最良なドリンフェルト・モジュラー曲線の塔を構成した.これは Arnaldo Garcia の結果の一般化であり,漸近的最良な楕円モジュラー曲線の塔の「関数体類似」でもある.(5)Dinesh Thakur は「関数体版超幾何関数」を提案した.その正当性をチェックした.(正当性)Thakur の超幾何関数の「変種」の係数のパラメータと変数をどちらも特殊化すれば,われわれの超特異多項式が生じる.これは上述の現象の関数体類似とみなせる.(非正当性)ガウス超幾何関数の場合は,係数のパラメータを特殊化し,変数をそのままにすれば超特異多項式が生じたが,今回は変数も特殊化する必要がある.その原因は,楕円曲線も階数2ドリンフェルト加群もパラメータは一つだが,超幾何関数にあらわれる場所が異なる.ガウスの場合は変数にあらわれるが,Thakur の場合は係数のパラメータにあらわれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Thakur の関数体版超幾何関数の正当性・非正当性があるていどチェックできた.正当性が主張できる部分と,ガウスの超幾何関数とは似ていない部分がわかった.似ていない理由もあるていどわかった.Thakur の超幾何関数とは異なる関数が提案できそうである.
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今後の研究の推進方策 |
(1)有限体上の楕円モジュラー曲線論において,一般的に「超特異多項式」の多項式恒等式は「超幾何関数」の関数等式から導かれる.ところが,有限体上のドリンフェルト・モジュラー曲線論においては「関数体版超幾何関数(未発見)」の関数等式を経由せず,直接的に「超特異多項式」の多項式恒等式を導いた.研究の流れを逆転させ,多項式恒等式から関数体版超幾何関数の形を追いつめたい. (2)楕円曲線論において,「周期」と「超幾何関数」と「超特異多項式」は互いに関係している.ドリンフェルト加群論において,「周期」と「超特異多項式」の関係はすでに与えたので,「周期」の方面からも関数体版超幾何関数を探りたい.
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