研究課題/領域番号 |
19K03400
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80409614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関数体版超幾何関数 / 指数型超幾何関数 / 対数型超幾何関数 / ポリログ / ドリンフェルト加群 / 関数体の塔 / モジュラー曲線 / 超特異点 |
研究実績の概要 |
本研究の成果(具体的内容)は以下:(1) Thakur (1995) の「階数 1 の指数型超幾何関数(つまり,カーリッツ指数関数の一般化)」を「階数 r の指数型超幾何関数(つまり,ドリンフェルト指数関数の一般化)」に拡張.階数 r の指数型超幾何関数が超幾何微分方程式をみたすこと,漸化式などの基本性質をみたすことを証明.(2) 「階数 r の対数型超幾何関数(つまり,ドリンフェルト対数関数の一般化)」を定義.階数 r の対数型超幾何関数が超幾何微分方程式をみたすこと,漸化式などの基本性質をみたすことを証明.(3) 階数 2 の対数型超幾何関数が階数 2 のドリンフェルト加群の「周期」と関係することに着目し,Garcia-Stichtenoth (1995) によって定義された関数体の塔が漸近最良であることを証明.階数 3 以上についてもおおよその見通しは立った. 本研究の意義・重要性は以下:有理点をたくさんもつ有限体上の関数体の塔を「漸近最良塔」という.漸近最良塔には二種類あり,一つは楕円モジュラー曲線(代数体サイト)に由来するものもので,もう一つはドリンフェルト・モジュラー曲線(関数体サイト)に由来するものである.関数体の塔が漸近最良であることを示すには,モジュラー曲線の超特異点をカウントする必要がある.楕円モジュラー曲線に由来するものについては,ガウス超幾何関数を用いれば超特異点がカウントできることが知られている.しかし,ドリンフェルト・モジュラー曲線に由来するものについては,そもそも関数体版超幾何関数が未発見であるため,そのような方法が使えなかった.本研究では,階数 r の対数型超幾何関数(つまり,関数体版超幾何関数)を定義し,階数 2 の場合を漸近最良塔の研究に応用した.いまのところ,指数型超幾何関数は漸近最良塔の研究には応用されていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗状況は以下:(1) ドリンフェルト・モジュラー曲線に由来する関数体の塔が漸近最良であることを示すため,「階数 2」の対数型超幾何関数を定義することがゴールであったが,「一般階数」の対数型超幾何関数が定義でき,しかも,この関数が超幾何微分方程式をみたし,漸化式などの基本性質をみたすことまで示すことができた.また,副産物として,一般階数のドリンフェルト加群の幾何学的背景が明らかになりつつある.(2) 関数体版超幾何関数を定義し,関数体の塔の研究に応用することがゴールであったが,関数体版超幾何関数の基本性質も示すことができた.たとえば,階数 1 の場合に,指数型超幾何関数が E-関数(Yu (1986) の意味)であることが示せた.また,今後は,L-関数という概念を定義し,階数 1 の対数型超幾何関数が L-関数であることを示すという航路が発見された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策は以下:(1) 階数 r の指数型超幾何関数(および,階数 r の対数型超幾何関数)の係数部分(いわゆるポッホハマー記号)を,分割 (partition) の概念を用いて一般化する.収束半径を計算する.階数 1 の場合はいずれの関数も収束半径は計算済.(2) 指数型超幾何関数と対数型超幾何関数が,互いに逆の関係にあるのではないかと考えている.階数 1 の場合はある程度見通しがあり,Anderson と Thakur (1990) のカーリッツ加群のテンソル積の概念を用いれば示せると考えている.(3) E-関数の定義を拡張し,階数 r の指数型超幾何関数が E-関数であることを示す.L-関数という概念を定義し,階数 r の対数型超幾何関数が L-関数であることを示す.(4) 階数 r のドリンフェルト加群の幾何学的背景を明らかにし,その結果を関数体の塔に応用し,関数体の塔の構造を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で,国内外の研究集会に出席することができなかった.海外購入の物品がキャンセルされることが多かった.
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