研究実績の概要 |
本年度は原田予想に関し更に考察を進めつつ, 頂点作用素代数の自己同型群の研究も始めることを予定していた. 原田予想に関しては,前年度の成果を用いて, 非自明な中心を持つ場合について考察をすすめることと, 頂点作用素代数の予想に関しては, コミュタントのC_2有限性をひとまず考察し, また重み 1の空間から得られる(内部)自己 同型による全自己同型群の商群の有限性がいつ成り立つのかについて, 頂点作用素代数の構造との関連を詳しく調べていく予定であった.成果としては, 原田予想に関し, 有限群Gがフロベニウス群で, そのフロベニウス核とフロベニウス補群がどちらも原田予想を満たすならば, G も原田予想を満たすことの証明を完成させrることができた. 一般に有限群 G が正規部分群 N を持つとき, Nと商群 G/Nが原田予想を満たすならば G が原田予想を満たすかという問題については未解決であるが,特に G がフロベニウス群と呼ばれる特殊な群で N がフロベニウス群を特徴付けるフロベニウス核と呼ばれる正規部分群であれば, このことが成立することがわかることになる. 頂点作用素代数に関して, 自己同型群の有限性に関して大きな進展はなかったが, 有限群によるオービフォールド模型の C2 余有限性に関して, 前年度の V-internal intertwining operator の研究での考察が使えないかと気づき, ある条件の下では, オービフォールド模型に含まれるビラソロ頂点部分代数がある種の有限性を持つことを見出すことができた。オービフォールド模型をビラソロ頂点部分代数やもう少し大きな部分代数の加群とみることで, オービフォールド模型の C2 余有限性の証明に近づけるのではないかと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も,コロナ禍にあり,落ち着いた十分な研究時間の確保が難しい状況であるが,課題研究最終年度ということで,研究成果の公表及び論文作成を推進したいと考えている。また平行して,頂点作用素代数の自己同型群に関する予想についてその解決の糸口を探っていきたい。主に,1) オービフォールド模型の C2 余有限性, 2) 自己同型群の有限性, 3) ムーンシャイン頂点作用素代数の一意性 ついて考察する。1)に関しては前年度の成果がヒントとなると考えているので,更に考察を深め、予想を解決する頂点作用素代数の構造を探りたい。特に頂点作用素代数のn点関数は C2 有限のとき,ある種の微分方程式を満たすが、その微分方程式を詳しく調べることで, オービフォールド模型の構造にも何らかの制限を導けるのではないかと考えている。2) に関しては,重み1の元に付随する自己同型と加群を普遍にする自己同型, 加群の置換を引き起こす自己同型について状況を整理し, それぞれの意味について現在の考察をまとめる予定である。特に正則頂点作用素代数の場合には, 加群の置換を引き起こす自己同型は本質的に存在しないので, そのことと自己同型群の間にどのような関係があるのかについて研究を深めたい. (3) については、今のところ解決の足掛かりがないため, その糸口を見出すためにも, (2) の研究, 特に内部自己同型が自明である場合の研究を進めていきたい。オービフォールド模型の表現論に関しては, 圏論的な考察もあるが, C2余有限性は頂点作用素代数の構造に大きくかかわっているので, 圏論的なアプローチは今のところ難しいと考えている。(1)に関しては、感覚的ではあるが、あと少しであるように感じているので、小さなアイデアを集中して見つけていきたい。
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