研究実績の概要 |
本年度前半では主に頂点作用素代数の C_2余有限性に関して考察を深めた. 特に C2余有限な頂点作用素代数について, そのオービフォールド模型の頂点作用素代数が C_2余有限であることの検証において, その双対空間における弱化群の構造を調べることと内部の構造を形式的に取り出した V-internal intertwining operators の研究の整理と考察を進めた. コロナ禍による大学業務の恒常的な対応により十分な研究時間の確保が難しく, これまでの研究内容の更なる検証のみとなってしまい, 効果的な考察や研究の推進まで実行することができなかった. 本年度後半では主に原田予想に関する考察を深めた.特に素数pに対し,位数が p べき乗である有限 p 群に焦点をあて, 原田予想の検証を試みた. 原田予想は共役類の位数という有限群の構造と既約指標というその表現の構造の関係に関した予想であるが, 本研究課題を通し, 有限群の構造のみで原田予想の確認が可能であることが分かったので, その観点からの検証を試みた. その構造とは, 複素数体上の群環の中心の共役和からなる基底のグラム行列式が原田数の整数倍であるという性質である。p群は非自明な中心を持つが, その中心は共役類の集合に自然に作用し, 共役類の置換を引き起こす. 中心の作用空間として共役類の集合を考えた時, 群の群環の中心に新しい基底が得られる. 共役和からなる基底とこの新しい基底の間の変換行列も明記できるため, 新しい基底で考察することにより, グラム行列を効率的に計算できることが分かった. この方針で二面体群等の共役類がよくわかっている群については, 比較的容易に原田数が計算できる. ただこの観点でも現段階では予想の解決にはたどり着けないため, 現在極大部分群の構造も考慮した考察を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍での大学業務の増加及び恒常的な対応により, 研究のための時間が断続的となってしまい, 研究の推進が予想以上に困難であった.時期によっては, 研究の時間を確保することができたが, そのたびに研究の進展の確認と時間経過による考察過程や研究方針のずれの修正に時間が必要となり, 推進するまでには至らなかった. そのため, 本年度が最終年度ではあったが,次年度に研究計画を延長し研究を推進することとした。年度末に当該業務が落ち着き, 次年度からは担当を外れたため, 研究を再始動した.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の延長が認められたため, 引き続き研究課題の達成に向け研究を推進する. 1)原田予想に関し, 年度末に新しい方針での考察に気づいた. この方針はp-群が原田予想を満たすかについて非常に効果的であると考えており, 現在研究を推進中である. この方針により, 二面体群や一般四元数群などの原田数の計算が表現論を経由せずに明示的に計算できるようになった。その他の群においても共役類や剰余群,極大部分群等の情報からある程度の原田数の計算ができることの見通しがついてきたので,その点について詳細を詰めている段階である. 2)頂点作用素代数の予想についても,平行して考察している. こちらについては, 双対空間の構造について追加的条件が必要になると考えているが, 最近のW代数の研究をこの双対空間の構造という観点から調査することにより, より一般的な設定でオービフォールドのC2余有限性を捉えなおし, その検証が行えるのではないかと考えている. こちらは研究の推進が遅れているため, 延長期間ではあるが, 研究の推進及びその研究の発信をしっかり行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により, 大学業務が増えたため, 研究の推進が難しかった点, 及びコロナ感染状況のため県外出張が難しく国外を含め, 旅費の使用ができなかったことにより次年度使用額が生じた. 最終年度ではあったが研究課題延長手続きを行い、受理されたため, R4年度に適切に使用する予定である。
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