研究課題/領域番号 |
19K03407
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
古澤 昌秋 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50294525)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保型L函数 / L函数の特殊値 / テータ対応 |
研究実績の概要 |
ベッヘラー予想 (Boecherer's Conjecture)のトーラス上の指標が非自明な場合への拡張について、森本和輝(神戸大学)との共同研究を引き続き行った。森本の精力的な研究によって、初稿の原稿が完成した。これを磨き上げて、投稿できる段階にまで持っていくことをなるべく早く実現しなければならない。 9月にはドイツのダルムシュタット (Darmstadt) において行われた国際研究集会において、もとの場合のベッヘラー予想の証明についての講演を行った。多くの聴衆が興味を持ってくれたと思っている。12月にはオーべルヴォルバッハ (Oberwolfach) で開催された国際研究集会にも参加した。どちらの集会も興味深い講演が多かった。近年の保型L函数関連の研究の進展には目覚ましいものがあることをあらためて実感した。特に、数論的に深い問題との関連を示唆する講演が多かったのが、印象的だった。いずれにせよ、今後の研究の進展へのインスピレーションを得ることができたのは、大変有益であった。 オクラホマ大学のKimball Martinが夏に短期間、大阪市立大学を訪問した。今後の共同研究の可能性に関して意見交換を行った。anisotropicな代数群上の保型形式に関して何かできないか、という方向性で大まかな合意が得られたが、問題を具体的に煮詰めるには至らなかった。 保型L函数に関する研究は近年方向性が変わりつつあると同時に、急速に深化しつつあると感じる。流れから取り残されないように努力しなければならないと自分を戒めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森本の努力によって、初稿が完成したことは大変喜ばしい。これについては、順調な進展であると言って良いと思う。繰り返しになるが、これを投稿できるところにまで仕上げることが何よりも重要である。 Martinとの共同研究に関しては、具体的な研究課題にまで至ることはできなかったが、anisotropicな代数群上の保型形式に関しての意見交換をできたことは有益であった。この方面は、まだあまり深いことは研究されていないように思われる。今後の進展が期待できるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
ベッヘラー予想のトーラス部分の指標が非自明な場合の、森本和輝(神戸大学)との共同研究を推進し、論文原稿を完成させることが最優先課題である。最近のガロア表現に関する研究の進展から考えて、重さが2の場合に限らず、無限素点での表現が一般のlimit of discrete seriesである場合にまで拡張することが望ましいと思われるので、その方向で努力したい。 Martinとの共同研究に関して、彼は2020年の夏に2ヶ月ほど大阪市立大学を訪問する予定であったが、COVID-19の影響で、訪問は中止になってしまった。残念ではあるが、インターネットを通して遠隔で連絡をとりあって、研究課題を煮詰めることができればよいのだが、と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に予定していた、いくつかの研究交流のための出張がCOVID-19の影響で中止せざるを得なくなったことが大きい。2020年度も少なくとも前半は国内、国外の研究交流のための出張は難しいと思うが、インターネットを通して、遠隔で行われる研究交流によって、それを補いたい。そして、そのための環境整備を積極的に行いたい。
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