次数2の正則ジーゲル尖点形式でヘッケ固有形式であるもののフーリエ係数に関する、ベッヘラー予想 (Boecherer's Conjecture)のトーラス上の指標が非自明な場合への拡張、すなわち、一般化されたベッヘラー予想について、森本和輝(神戸大学)との共同研究を引き続き行った。また、これと関連する、ユニタリ群U(2n)とU(1)に関するベッセル周期についての、Refined Gan-Gross-Prasad予想、すなわち、市野-池田型のL函数の中心特殊値の明示公式についての森本との共同研究も引き続き行った。どちらの研究についても論文が完成し、arXivにアップロードし、現在、国際学術誌に投稿し、査読中である。前者については、応用上、重要であると思われる、アーベル曲面と関係すると予想される重さ2の場合もtemperedの仮定のもとで含むことができるようになったし、ベクトル値ジーゲル保型形式の場合を含む形で証明することもできたし、明示公式における2ベキに関する曖昧さも解消できた。 これらの研究成果については、今後、様々な応用が期待される。 令和4年度もCOVID-19の影響によって、対面での研究交流を通して、この研究成果を国内外に発信することが難しい時期が続いたが、年が明けてから、令和5年1月には京都大学で開催された研究集会「保型形式と数論」において、3月にはドイツのPaderborn Universityで開催された研究集会「Special Values of L-functions」において、一般化されたベッヘラー予想についての講演を行うことができ、多くの人々に関心を持ってもらうことができた。
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