研究課題/領域番号 |
19K03408
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
諏訪 紀幸 中央大学, 理工学部, 教授 (10196925)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 群スキーム / Lucas数列 / Lucas数列のrank / Lucas数列のperiod / Laxton群 / p進指数函数 / p進対数函数 |
研究実績の概要 |
本研究「群スキーム理論の応用、特に正規底問題とLucas数列の数論について」は昨年度から基盤研究(C)で援助をいただいている。昨年度は副題にある二項目の研究課題のうち、Lucas数列の数論について目覚ましい成果を得、もっぱらそちらの研究を進めた。 Lucas数列に関する最初の論攷である「Geometric aspects of Lucas sequences I」がTokyo Jourrnal of Mathematics に掲載予定、Project Euclid において Advance Publicaiton の形で公開されている。また、その続篇である「Geometric aspects of Lucas sequences II」もTokyo Jourrnal of Mathematics に投稿したが、査読者から有益な意見をいただき、内容を深めながら、改訂を進めた。 この2篇では階数2のLucas数列について論じたが、高階のLucas数列に対して論述を一般化した「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」が「代数的整数論とその周辺2018」報告集に掲載されることがが決定された。この報告集は京都大学数理解析研究所から講究録別冊として発刊される予定である。この論攷についても査読者から有益な意見をいただいた。 さらに、以上の3篇の論文の続篇「Geometric aspects of Cullen-Ballot sequences」をまとめ、学術誌に投稿の予定である。 また、3階のLucas数列に関して、大学院生の斎藤暢君に修士論文の課題として取り組ませた。報告者の助言を得ながら、斎藤君は修士論文「幾何的視点から観たLucas数列~3階の場合」をまとめた。この修士論文は中央大学宇術リポジトリに公開される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」で提示したLucas数列に関する考察は、19世紀後半のEdouard Lucasの研究に始まる一世紀半にわたるLucas数列の研究の歴史の中で、代数幾何学の視点から論述を展開した初めての研究である。 これまでの Lucas 数列の研究はもっぱら初等整数論あるいは二次体の整数論、代数的整数論の枠組みの中でなされて来た。群スキームや射影空間が議論の中に現れたLucas 数列の研究は皆無であった。また、完全列の可換図式がこれほど活躍するLucas数列の研究もこれまで皆無であった。 刊行される学術誌のスタイルファイルにもよるが、「Geometric aspects of Lucas sequences I」が64頁、「Geometric aspects of Lucas sequences II」が75頁、「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」が25頁という大部の論文の連作となった。冗長な論述によって長くなったわけではない。研究を進めたら長くなった、それが実際のところである。 ただ、旧来の方法に慣れている研究者には受け入れ難いところがあるようで、そのような研究者も納得するように論を立てる工夫が必要だと感じている。
|
今後の研究の推進方策 |
なすべきことは多いが、「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」は概説であり、今後の研究方針を示したに止まっている。斎藤暢君の修士論文「幾何的視点から観たLucas数列~3階の場合」では多くの計算例が示され、その例が多くのことを示唆しているが、理論的なことに関しては報告者の構想の百分の一も述べられていない。「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」で展開した議論を「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」で示した展望の下、高階のLucas数列について研究を進めて、結果をはっきりした形で、論述を整備する必要がある。 「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」では2階の場合を扱ったが、二次体の整数論の豊富な結果を援用でき、精密な議論ができた。一方、高階の場合、代数的整数論の結果を援用することになるが、二次体の整数論ほど詳しい各論はなく、どの程度にまとめるか、思案中である。 また、二次体の整数論に匹敵するのは円分体の整数論であるが、特性多項式の最小分解体がアーベル体であるようなLucas数列が一般のLucas数列の中でどのような位置を占めているのか、判然としない。渋谷元樹などによる先行研究があるが、先行研究を探査し、それを精査する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月3日から3月6日まで北海道大学理学部で開催される第16回数学総合若手研究集会において、斎藤暢君が「幾何的視点から観たLucas数列~3階の場合」と題して講演する予定であった。諏訪も同伴する予定であり、年度末の開催ということもあって、昨年度の当研究に対する科研費の予算枠を超えないようように、支出を抑えていた。ところが、コロナウィルス感染流行のため、2月末に研究集会中止が決定され、その分の予算が大幅に余った。
繰り越された予算はすべて図書費に充てられる。
|