研究課題/領域番号 |
19K03408
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
諏訪 紀幸 中央大学, 理工学部, 教授 (10196925)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 群スキーム / Lucas数列 / Lucas数列のrank / Lucas数列のperiod / Laxton群 / p進指数函数 / p進対数函数 |
研究実績の概要 |
本研究「群スキーム理論の応用、特に正規底問題とLucas数列の数論について」は一昨年度から基盤研究(C)で援助をいただいている。昨年度は副題にある二項目の問題のうち、Lucas数列の数論について目覚ましい成果を得、もっぱらそちらの研究に専念していた。この主題では最初の論稿である「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」がTokyo Journal of Mathematics 43に掲載された。いずれも査読者に恵まれ、非常に有益な助言を得、内容が深めることが出来た。第43巻の550頁から2篇合わせて170頁もの紙数を提供していただいた、Tokyo Journal of Mathematics 編集部のご判断に謝意を表したい。
「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」で提示した幾何的視点から観たLucas数列の研究は19世紀後半のEdouard Lucasの研究に始まる一世紀半にわたるLucas数列の研究の歴史の中で、群スキームや射影空間を議論の軸に据えた初めての研究である。Lucas数列に関する研究の長い歴史の中で、射影直線 P1 さらには射影空間 Pn という言葉が現れる最初の論文であろう。
Lucas数列は見掛けは初等的な内容であり、Fibonacci Quarterly に寄せられる多くの論考に見られるように、数学愛好家も取り組める事項である。そこに新たに幾何学の視点を提示したことの意義は大きいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Lucas数列に関する研究は、Edouard Lucas以来150年以上の歴史があるが、初等整数論の範囲で、あるいは精々、代数的整数論の基本事項で片付く事柄が殆どであった。例えば、Ballot「Density of prime divisors of linear reccurrences」Memoir of A. M. S. 115 (1995)やAoki-Kida「On the Laxton group」Res. Number Theory 5 (2019)も、Binetの公式の呪縛、あるいは、二次体の整数論の呪縛から逃れていない。非常に窮屈な議論をしている。
本研究では代数幾何学の視点からLucas数列を見るという新機軸を打ち出したが、「Geometric aspects of Lucas sequences I」ではまだ二次体の整数論に囚われていた。「Geometric aspects of Lucas sequences II」の査読者とのやり取りを通じて、二次体の整数論の呪縛から逃れることが出来た。
高階のLucas数列に関する研究の展望は「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」で公表しているが、それに結果を付け加えているところである。就中、代数幾何学では常識である代数多様体のパらメトライゼーションの考え方が、「Lucas数列の族」に対しても適用できることを詳述したい。
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今後の研究の推進方策 |
なすべきことは多いが、「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」は概説であり、今後の研究の方針を示したに止まっている。斎藤暢君の2020年度修士論文「幾何的視点から観たLucas数列~3階の場合」では多くの計算例が示され、その例が多くのことを示唆しているが、理論的なことに関しては報告者の構想の百分の一も述べられていなかった。
「Geometric aspects of Lucas sequences, a survey」では、Laxton が2階階差数列に対して定義した群 G(f) を一般の高階階差数列に対して定義したが、Laxton が定義した G(f) の部分群 H(f,p)、K(f,p)、G(f,pn) も一般の高階階差数列に対して、定義できることに気付いた。
「Geometric aspects of Lucas sequences I」「Geometric aspects of Lucas sequences II」では2階の場合を扱ったが、二次体の整数論の豊富な結果を援用でき、精密な議論ができた。一方、高階の場合、代数的整数論の結果を援用することになるが、二次体の整数論ほど詳しい各論はなく、どの程度まとめるか、思案中である。また、2階の場合、G(f) の P1 への同変な埋め込みが存在するが、n階の場合、 G(f) の Pn-1 への同変な埋め込みを構成できる。2階の場合、差集合は高々基数2の有限集合であったが、n階の場合は、差集合は Pn-1 の余次元1のZarisiki閉集合である。nが増大するにつれ、その差集合の振る舞いは複雑となる。そこをどう記述するか、思案中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナウィルスパンデミックの影響で、国内であれ国外であれ、研究集会はオンラインで開催されるのが通常となった。そのため、例年、九州大学やと京都大学数理解析研究所で開催される整数論に関する研究集会に参加するために現地に赴く必要はなかった。したがって、出張旅費として計上していた予算が余った。
すべて図書費に充てられる。
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