研究課題/領域番号 |
19K03411
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大橋 久範 東京理科大学, 創域理工学部数理科学科, 准教授 (40547006)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | K3曲面 / Mathieu群 / 自己同型群 |
研究実績の概要 |
清書中だった論文の証明の書き下しが少しずつ進んで終わりが見えてきて、完成に近づいている。たくさんの箇所で論旨が明確になったほか、標数3における可解な極大群の、従来の不変式論とは異なった新しいアイデアを用いた構成ができたように思う。このアイデアはSchutt氏によるものだが、群が大きな部分群を持つ場合に適用できる汎用性があり、特に標数0においては向井氏の結果からすべての極大自己同型群の射影実現が分かっていることと合わせると、多くの極大有限群の構成に使うことができるのかもしれない。ただし、それでもまだ実現するのが難しい場合も多い。これは欲しい群が分かりやすい部分群を持たない場合や、わかりやすい部分群の射影実現の間の同型写像の構成が一般には困難である(一般的な方針はなく、ケースバイケースで証明するしかない)ことに起因する。私のほうは不変式論に基づく証明を与えたかったが、一般的に考えようと小さい群から考えたものの、モジュラー表現の一般論があまりに膨大でつまづいている。あらためて論文の主定理、平方剰余記号を用いた各標数における有限群の特徴づけを見てみると、これは不変式論のような比較的きれいに書ける定理を導き出せる傍証であると考えられる一方で、平方剰余記号がモジュラー表現で果たす役割があまり想像できていないため、この方針ではまだ難しいという可能性もあるように思われる。この部分についてはまだ本質的な考察が必要であると思われるが、主定理自体はかなり書き下すことができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度は一気に進展したが、今年度は新しいアイデアがうまくいかず、またコロナ体制からそれ以前の大学への転換で忙しさを感じていたこともあり、研究内容は少し停滞してしまった。それでも、論文自体は進歩していると思う。
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今後の研究の推進方策 |
正標数における自己同型群について、特に野性的な場合にいろいろなことがわかってきたのは大きな進展である。高次元のシンプレクティック多様体やエンリケス曲面などにも応用できると嬉しい。また、無限位数の自己同型群について新しい進展を見つけたのでそちらも考えてみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がうまく進まなかったのもあり、またコロナ体制から通常体制への過渡期と感じられたこともあり、たくさんの出張をこなすことができなかった。研究用の資料については見つけて都度購入したりしているが、それでもかなり次年度使用額が生じてしまった。 可能であれば、各所に出張したり、ドイツの共同研究者に会いに行きたい。
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