研究課題/領域番号 |
19K03412
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安福 悠 日本大学, 理工学部, 教授 (00585044)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 整数点 / 有理点 / 高さ関数 / 軌道 / Vojta予想 / ディオファントス幾何 / ブローアップ |
研究実績の概要 |
2019年度は,(1) 代数多様体の整数点が満たす性質,(2) 代数多様体の有理点が満たす性質,(3) 代数多様体上の射により作られる軌道上の整数点についての性質,の3研究を主に行った.(1)に関してはJulie Wang氏 (研究協力者,台湾中央研究院)との共同研究が柱であり,ある性質を満たす開代数多様体上の整数点の高さが小さいことを示した.これは,Aaron Levin氏 (米国ミシガン州立大)の結果の一般化となっており,現在専門誌に投稿中である.(2)に関しては,(1)の研究手法を踏まえ,射影平面の多重ブローアップに限定して,整数点のみならず有理点全体を考察したものである.この結果は,ディオファントス幾何の重要な予想であるVojta予想と比較すると弱いが,これまでの結果は全て整数点に制限されていたので,有理点全体で予想を仮定せずに得られた初めての結果である.(3)に関しては,Jorge Mello氏 (オーストラリア ニューサウスウェールズ大)との共同研究で,代数多様体上に複数の射があったときに,それが可換でなくても,軌道上の整数点の少なさについて言及できる状況について考察した.このような問題には,標準高さの構築を活用することが多いが,本研究では,標準高さが構築できないような場合においても整数点について結果を得ているところが大きな進展である.これらの結果について,北京大学における国際研究集会「Geometry of Arithmetic Varieties」や,愛媛大学と大分大学におけるセミナーで講演を行った.また,(3)のテーマに関しては,世話人を務めた国際研究集会「Rational Points of Higher Dimensional Varieties」でのKhoa Nguyen氏 (カナダ カルガリー大)の講演をもとに,Nguyen氏とも共同研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究業績の概要」欄の(1)に関しては論文を完成させており,(2)や(3)のテーマに関しても査読付き専門誌に投稿する結果が得られたので,研究課題に関連する3テーマで進捗があった.よって,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に関しては,まず,「研究業績の概要」欄 (2),(3)で述べた論文を完成させて投稿する.また,(3)のテーマに関しては,Nguyen氏との共同研究を続けることで,関数体上での力学系について調べていく.また,(2)のテーマに関しては,より多くの多重ブローアップや高い次元の射影空間において,同様の結果を得られないか考察していく.(1)~(3)のテーマどれに関しても,Ru--Vojtaにより確立されている既存の方法のみならず,部分空間定理を活用する新しい枠組みの構築や部分空間定理そのものの改良も進めていく.2019年度同様,研究集会やセミナーでの講演を通して,世界の研究者に周知していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,2020年2月に招聘予定であった研究者2名が,新型コロナウイルスの影響で来日できなくなったため,次年度使用が生じた.2020年度以降にあらためて招聘する費用として使用予定である.
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