研究課題/領域番号 |
19K03412
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安福 悠 日本大学, 理工学部, 教授 (00585044)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高さ関数 / 整数点 / 有理点 / 軌道 / Vojta予想 / ブローアップ |
研究実績の概要 |
2021年度もCOVID-19の影響が続いてしまい,海外での研究集会への参加や,海外からの新鋭研究者の招聘は実現できなかったものの,国内での研究集会は2020年度よりは開けるようになり,これまでに得られた結果を周知したり,海外で発表された最新理論を合同で勉強して新たな研究課題を見つけたりすることができた.まず,Jorge Mello氏 (研究協力者 Basel大)との共同研究をさらに進めて,軌道上の原始素数についての精密評価を得た.また,射影平面のブローアップ上の整数点に関しては,Ru-Vojtaの定理の活用方法を変更することで,前年度までに得ていた最大公約数の不等式を改良することができた.さらに,アーベル多様体上での部分多様体と群の共通部分を分析するモーデル・ラング予想は,近年Dimitrov-Gao-Habeggerにより大幅な進展があり,この理論の根幹となるBetti写像や非退化部分多様体の判定について勉強会を開催した.ある種の一様有界性を導くこの理論の力学系への応用,特に一様版力学系モーデル・ラング予想への応用を継続研究中である.これらの研究成果については,大分整数論研究集会及び九州代数的整数論の集会で講演することで,専門家に周知することができた.また,10年に一度開催されている集会「複素幾何学の諸問題」では,代数多様体上の有理点と軌道というテーマで,分野全体を俯瞰する紹介とともに今後10年の予想される研究課題について講演をし,複素幾何・代数幾何などを専門とする100名を超す研究者と情報共有ができた.このほかにも整数論や代数幾何の国内研究集会に参加することで,最新の研究の知見を得た.また,初学者向けの整数論の本の翻訳も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数写像の軌道に関するMello氏との共同研究や,射影平面のブローアップ上でのVojta予想に関する不等式を,前年度までの結果より精密化することができ,これらの研究成果について発表する機会も与えられたので,研究はおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,Corvaja-Zannierによる最大公約数の不等式の拡張に取り組む.彼らの結果はS単数を対象としたものだが,これをS整数などに拡張できるよう,Schmidtの部分空間定理の活用法を工夫したり,あるいはSchmidtの部分空間定理の主張そのものをより精密化したりする.軌道に関しては,最近のDimitrov-Gao-Habeggerの理論なども踏まえて,軌道の整数点の一様性について研究する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で,当初予定していた海外での研究集会への参加ができなくなり,また,当初予定していた海外の研究者の招聘も延期となったことから,主に旅費に残額が生じた.どちらも2022年度に予定しており,使用する計画である.
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