研究課題/領域番号 |
19K03413
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 圭司 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30229546)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 相対ねじれホモロジー群 / 相対ねじれコホモロジー群 / 交点形式 / モノドロミー表現 / Gauss-Manin 接続 |
研究実績の概要 |
Appell により導入された2変数幾何微分方程式 F_2 は5つのパラメーターを有する階数4のフックス型方程式である。そのパラメーターが特別な場合に小さな近傍上の4つの1次独立な解の連比を解析接続して定まるシュワルツ写像について、その性質をほぼ完全な形で解明した。その内容は以下の通りである。1.局所解空間の基底で、すべての周回変換が整数係数の行列で表現されるものを構成し、それらの行列で生成されるモノドロミー群の特徴づけを与えた。2.シュワルツ写像の像は3次元射影空間内の2次元部分空間であるが、それが上半空間を底空間とし、楕円曲線の直積をファイバーとするファイバー束内の解析的集合の稠密な開集合と同型になることを示し、解析的集合を定める定義式を具体的に与えた。3.シュワルツ写像の逆写像をテータ関数を用いて具体的に与えた。上記の結果は、https://arxiv.org/abs/1912.08399 にて公開されていて、いくつかの談話会やセミナー等における講演でその研究内容の解説が行われた。 Galatasaray University (Istanbul, Turkey) にて開催された国際研究集会「Monodromy and Hypergeometric Functions」において, 超幾何関数の積分表示に関するねじれホモロジー群上に定まる交点形式を用いた超幾何微分方程式系のモノドロミー表現の導出方法について講演した。その研究集会における講演内容は、 http://math.gsu.edu.tr2020workshopmonodhypergeom.html にて公開されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究においては、相対ねじれ(コ)ホモロジー群が定義される空間が高次元になる場合に、多重積分表示を有する超幾何微分方程式系の局所解空間と同型を示すことを最初の目標に掲げていたが、その研究はあまり進展していない。しかし、Padova University (Padova, Italy) の数理物理学者が Feynman Integrals に対する最近の研究に、研究代表者の25年前の研究結果を応用していたので、2019年9月に研究交流が実施された。超幾何関数間に成立している Elliott's identity に対して、ねじれ(コ)ホモロジー群間にある交点形式による導出方法を見つけ出し、Feynman Integrals への新しい応用が芽生えつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の目標であった、相対ねじれ(コ)ホモロジー群が定義される空間が高次元になる場合に、多重積分表示を有する超幾何微分方程式系の局所解空間と同型定理の構成をめざす。そして、相対ねじれ(コ)ホモロジー群の交点形式を用いた超幾何微分方程式系のモノドロミー表現や Gauss-Manin 接続の表現に関する研究の他分野への応用を計る。特に、Galatasaray University の研究者が行っている Calabi-Yau 多様体のミラー対称性の研究や Padova University の研究者が行っている Feynman Integrals に対する研究への協力を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大抑制のため、予定していた出張が取り消されたことが主な原因である。新型コロナウィルスの感染が終息すれば、北海道特殊関数セミナーの講演者を招聘するための旅費として使用する。そうでない場合は、遠隔での共同研究を行うためのコンピューター関係の整備に使用する。
|