研究課題/領域番号 |
19K03414
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
花村 昌樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (60189587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半代数的集合 / Hodge複体 / 対数的極をもつ微分形式 |
研究実績の概要 |
I. 代表者は,半代数的集合のうえの極をもつ微分形式の積分の理論を研究し次の結果を得ていた.(1) 複素n次元空間において,コンパクトな実半代数的集合の上の,滑らかな微分形式の積分の理論.(2) 複素n次元空間において,コンパクトな実半代数的集合の上の,対数的な極をもつ微分形式の積分の理論(具体的には,m次元の実半代数的集合Aと,m次の微分形式で座標平面上で対数的な曲を持つものに対し,Aと各面(=座標平面の交わり)が固有に交わるという条件のもとで,その微分形式のA上の積分が収束することが示される. )これらの結果を半解析的集合の場合に拡張することを試み,(1)についてはそれが拡張することができた.(2)については,ある条件つきで,拡張することができた. II. 非特異で完備な複素多様体Xと,その上の滑らかな因子Hが与えられたとする.(1) Hのコホモロジー,Xのコホモロジー,X-Hのコホモロジーを含むいわゆるGysin完全系列が存在するが,これはそれぞれの混合Hodge構造と両立する.代表者は H, X, X-HのそれぞれのHodge複体と,それらのなす短完全系列で,この長完全系列を導くようなものを与えた. (なお標準的なHodge理論による構成は,このようなものは与えない.)Xの上の,Hに対数的極をもつような滑らかな微分形式の複体と,Hの上の滑らかな微分形式の複体,およびPoincare residueを用いて得られる全複体K(X)は,混合Hodge構造の構造を与えることができ,それはXの混合Hodge構造を与える.(2) X上の位相的チェインのなす複体から,上記の複体K(X)への非自明な写像を構成できる.これらの構成の詳細をまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I. 半代数的,半解析的な集合上の積分の研究については,先行研究として解析的集合の場合のLelongによる研究, 実半解析的集合のLojasiewieczによる研究, 実半解析的集合の上の積分のHerreraによる研究がある.これらを理解するのにかなりの時間を要したが,それを理解することにより,自身の研究が簡明さが明らかとなった.半解析的な場合に,対数的な極をもつ微分形式の積分の理論がある条件つきで構築できることが分かった. II. Hodge複体の研究については,技術的には, 重さフィルターづけ(weight filtration)でなく,それを捻って得られる フィルターづけ(いわゆるdecalage)を用いることが必要であることに気づくのに時間を要したが,それによって理論展開が 明快になった.
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今後の研究の推進方策 |
I. 半解析的な集合が定めるカレントの理論を構成する.鍵となるのは,(1)半解析的写像の半解析的局所自明性,および(2)解析的曲面のblow-upによる解消である.(1)については,半解析的写像より少し広い範疇(sub-analytic 写像 の範疇)ではすでに知られているので,参考になる.
II. Hodge複体の理論をより一般化し,非特異代数多様体Xの上の正規交叉因子の対(Y, H)が与えられているとき,三つ組(X; H, Y)に対する理論に拡張をする.この3つ組に対応するHodge複体K(X; H, Y)と,標準的なHodge理論により得られる Hodge複体が同値であることを証明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の蔓延により,研究集会のための出張ができなくなり,また研究協力者と直接に会って討論するための 出張ができなくなった.今年度の後半ではこれらの出張を再開することにより,これらの費用を用いる予定である.
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