研究実績の概要 |
Borel-Mooreホモロジーについての研究.(1) 局所コンパクト空間の無限chainの特異ホモロジーに対し「閉集合にサポートをもつcap積」の定義を与えた. (2) Borel-Mooreホモロジーと無限chainの特異ホモロジーの間のchainレベルでの同値を具体的に与えた.(3) この同値を通じて,それぞれのホモロジーにおけるサポートつきcap積が一致することを証明した.これは事実として専門家に使われてきたが,証明はここで初めて与えられた.(4) 局所コンパクト空間と閉集合の対(X, Y)で,「余次元 d の向きづけ」を持つものに対し,そのBorel-Mooreホモロジーを定義し,上記の(1)-(3)の一般化を行った.
2. 明示的Hodge複体の構成.複素数体上のスムースな代数多様体に対し,Deligneは混合Hodge複体の概念を与え,さらにBeilinsonはそれをチェインレベルで考察しHodge複体の概念を与えた.それとは別の次のような明示的な構成を与えた.(1) コンパクトと限らないスムースな代数多様体Xと正規交叉因子Hに対し, Hodge複体E(X, H)であって,次の二つの性質を満たすものを構成した.(a) E(X, H)の「有理成分」は,X上の位相的なチェインのなす複体であり,(b) E(X, H)の「複素成分」は,Hに対数的極を持つX上の微分形式の複体を用いて記述される.特に,Hodge複体E(X, H)には(原理的に計算のできない)Godement分解やカレントの空間が現れないという意味で明示的である.(2) この構成のため,対数的微分形式に対するCauchy-Stokes公式を定式化し証明した. (3)上記の明示的Hodge複体E(X, H)と,DeligneおよびBeilinsonによる抽象的Hodge複体の間の比較同型を構成した.
|