研究課題/領域番号 |
19K03415
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐垣 大輔 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40344866)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子アフィン代数 / 結晶基底 / エクストリーマル・ウェイト加群 / 半無限LSパス / 量子LSパス / Demazure加群 / 量子alcove模型 |
研究実績の概要 |
\mathfrak{g} を有限次元単純リー代数とし,W をその(有限)ワイル群,P をその整ウェイト格子とする.\mathfrak{g}_{af} を \mathfrak{g} に付随した(untwisted な)アフィン・リー代数とし,W_{af} をアフィン・ワイル群とする.\mathfrak{g} の優整ウェイト \lambda に対して,V(\lambda) を量子アフィン代数 U_{q}(\mathfrak{g}_{af}) 上のレベル・ゼロのエクストリーマル・ウェイト加群とする.W_{af} の元 x に対して V_{x}(\lambda) を V(\lambda) における Demazure 加群とする.このとき,V_{x}(\lambda) の次数付き指標 gch V_{x}(\lambda) が自然に定まる. 2019年度(平成31年度・令和元年度)は,C.Lenart氏と内藤聡氏との共同研究で,任意の整ウェイト \mu についての Pieri-Chevalley (PC) 型の展開公式,すなわち,\mu より十分大きい任意の優整ウェイト \lambda に対して,gch V_{x}(\lambda+\mu) を gch V_{y}(\lambda) (y \in W_{af}) たちの(\mathbb{Z}[P][q^{-1}]の元を係数とする無限和の)線形結合に展開する公式を証明した.この PC 型の公式は,量子alcove模型を用いて記述される組み合わせ論的なものである.また,この PC 型の公式により,任意の整ウェイト \lambda \in P と x \in W に対して,K_{T \times \mathbb{C}^{\ast}}(\mathbf{Q}_{G}) における積 [\mathcal{O}_{\mathbf{Q}_G}(\lambda)] \cdot [\mathcal{O}_{\mathbf{Q}_G(x)}]の組み合わせ論的な展開公式が得られた. この研究成果は,申請書類の「研究目的」に記載した問いの1つに対する解答であり,当研究において非常に重要な進展である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた通り,2019年度(平成31年度・令和元年度)は,当研究の最初の目標であった「一般の整ウェイトに対する Pieri-Chevalley (PC) 型の展開公式」を(量子alcove模型を用いて)与えることができた.この研究が初年度で完了したのは,当研究において非常に大きな進展である.よって,区分を「当初の計画以上に進展している」とする.
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今後の研究の推進方策 |
現状,当研究は順調に進展しているといえる.そこで,今後も申請書の計画にそって研究を進めたいと思う.2020年度(令和2年度)は,特に,Lenart とPostnikov (2007) によって予想された「旗多様体の量子 K-群における,量子 Bruhat 作用素を用いた次のChevalley 型の公式」の証明を目指す.この予想の証明において,2019年度に得られたPC型の公式が役立つものと考えられる. この予想を証明するために,当初は,共同研究者である Lenart氏と議論を行う予定であった.しかし,2020年度は,コロナ・ウィルスの影響でアメリカへの渡航が極めて難しいと考えられる.そこで,オンラインで議論ができるように各機材の整備・購入を行う予定である. 一方,別の研究課題において,\varpi_{i} が minusucle ウェイトで,\lambda = N \varpi_{i} (N は正の整数) かつ \mu = \varpi_{i} のときに,gch V_{x}(\lambda+\mu) に対する「放物型の」Pieri-Chevalley (PC) 型の公式を(項のキャンセレーションを完全に取り除いて)より正確に記述することに成功した.また,Monk 型の公式についての研究も進んでいる.これらは当研究とも密接に関連した研究成果であり,当研究への応用も十分に期待できる.そこで,当研究においてもこれらの拡張についての研究を行いたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だったノートパソコンをより安価なものですませた.また,図書も予定より少数のもので研究を遂行することができた. 令和2年度だが,現在,コロナの問題で対面での研究打ち合わせや出張が極めて困難である.そのため,オンラインで研究打ち合わせ等を行うための機材の購入を行う予定である.
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