研究実績の概要 |
\mathfrak{g} を A_{n} 型の有限次元単純リー代数とする.すなわち, \mathfrak{g} = \mathfrak{sl}_{n+1}(n+1 次の特殊線形リー代数)であり,そのワイル群は n+1 次対称群 S_{n+1} と同型である.Cristian Lenart と前野俊昭 (2006) は, A_{n} 型の旗多様体 Fl_{n+1} の量子K-群 QK(Fl_{n+1}) について,多項式環の剰余環としての具体的な記述を与えた.さらに,この記述のもとで,量子 Grothendieck 多項式が Schubert 多様体の構造層のクラス (\in QK(Fl_{n+1}) を代表することを予想した.この予想は, Lenart 氏,内藤聡氏との共同研究 (Selecta Mathematica, New Series, 2024) においてすでに証明している.さらに, Lenart と前野は, 同論文において,ある巡回置換に対応する量子 Grothendieck 多項式と, 一般の元に対応する量子 Grothendieck 多項式の積を, 量子 Grothendieck 多項式の線形結合で展開する組み合わせ論的な公式 (Pieri 型の公式) を予想した. この予想も,内藤聡氏との共同研究 (arXiv:2211.01578) において,肯定的に解決済みである.2023年度は,Pieri 型の公式の同変版に関する研究を行い,いくつかの新たな予想をたてた. また,前野氏,内藤氏との共同研究で,ワイル群の最長元に関する半無限 Schubert 多様体の構造層のクラスを,基本ウェイトのワイル群軌道に含まれる整ウェイトに付随する線束のクラスの\mathbb{Z}[P]-線形結合で展開する公式を得た.
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