研究課題/領域番号 |
19K03416
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
越谷 重夫 千葉大学, 先進科学センター, 特任教授 (30125926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブロック / 森田同値 / 有限次元代数 / 既約加群 / アウスランダー・ライテン箙 / 可換不足群 / スコット加群 / ブラウアー直既約性 |
研究実績の概要 |
2019年度には査読付論文が3編出版された。有限群の表現論における局所大域予想がその内容である。主体は有限群で更に標数が素数である体上での表現を考える。先駆者R.ブラウアーが提唱した多くの予想及び問題を解くことが肝要で、特にここ20年程大幅に進展があった。 櫻井太朗と、小さいブロックの構造を特徴付けたものが第1作目である。ブロックとは、上記の有限群と体で定義される群代数の、代数としての直既約直和因子のことである。より一般に、有限次元代数のブロックを考察した。ブロックに入っている既約加群の個数は、交換子部分空間の余次元と関連していて、それに関して興味ある結果を得た。2作目は、ドイツ勤務の C.Lassueur との共同研究である。彼女との3作目である。局所大域予想の重要問題である、群代数のブロック(大域)とブラウアー対応している小さいブロック(局所)の表現の関係を調べた。有限次元代数での大理論アウスランダー・ライテン箙を駆使して、可換不足群を持つ上記2つの主ブロックの関係を調べた。3作目は、トルコのI.Tuvay との第1作目である。彼女は3年前に千葉大学を訪問し、そこから始まった共同研究である。局所大域予想で重要となる安定同値を得る際に役に立つ「スコット加群のブラウアー直既約性」に関しての話である。 海外出張1つ目は昨年6月ベルギーでの研究集会であった。私自身は講演しなかったが代わりに共同研究者 T.Weigel(イタリア)が我々の共同研究の結果を発表した(招待講演)。彼との共同研究も進展した。10月末にはドイツでの国際研究集会で招待講演を行った。B.Kuelshammer と局所大域予想に関して議論した。7月初めと11月末の2度、ドイツのC.Lassueur の勤務する大学を訪問した。彼女とは、6月、10月にも上記出張先で共同研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初めに、上記「研究計画の概要」と一部重複することを御断りする。 有限群の表現論における局所大域予想が今回の課題である。論文2作目では、正に局所(ブラウアー対応している「小さい」有限群のブロック)と大域(「大きい」有限群のブロック)での表現が、似ている部分が多々あることを証明することができた。予想していたとは言え、本当に証明できたことは喜ばしい。 また、3作目でのスコット加群に関するブラウアー直既約性も、まさしく大きい有限群の主ブロック(大域)と小さい有限群の主ブロック(局所)の間の類似性を導く「安定同値」を得るのに役に立つ。これも想定内ではあったが、厳密に証明できたので、2019年度の研究が順調だったことを意味している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度3作目のスコット加群のブラウアー直既約性に関しての話を、より広い範囲で更に進展させることを頑張りたい。これができれば、より多くの場面で、2つの主ブロックの安定同値性が得られる可能性が出て来ることがわかり、その結果として2つの主ブロックの類似性(局所大域)が確かめられることになるからである。 また、6年前から始め、ほぼ完成に近づいている T.Weigel(イタリア) との共同研究も最終的な論文にまとめたいと思っている。これも局所大域予想の精神(哲学)そのものの話である。 最後に、2年以上前から行っている C.Lassueur(ドイツ)との共同研究に関して述べる。「局所大域予想」の一部であるが、少し別の面からみた研究「置換加群と通常指標との関連」を今後大いに進めて行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実は、当初は、2020年3月にイギリスへ海外出張する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの深刻な状況でこれが不可能になった。そのため、旅費(航空運賃代)に使う予定であった予算が余った。
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