研究課題/領域番号 |
19K03419
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
林田 秀一 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (80597766)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新谷の二重ディリクレ級数 |
研究実績の概要 |
多変数の保型形式、特にジーゲル保型形式に付随する新しい多変数のディリクレ級数について調べることが本研究の目的である。具体的には、次数2のジーゲル保型形式に付随する2変数のディリクレ級数について解析接続および関数等式(一つとは限らない)を得ること、および、その2変数のディリクレ級数の明示公式を得ることである。また、次数2のジーゲル保型形式に限らずに一般の次数 n のジーゲル保型形式についても n 変数ディリクレ級数を定義することができ、同様の問題を考えることができる。 昨年度までの研究で、次数2のジーゲル保型形式に付随する2変数のディリクレ級数の解析接続、および2つの関数等式を導いていた。しかし、佐藤文広氏の指摘により、この結果は、Arakawa-Makino-Sato (2001) の論文の結果から導くことができることが、本年度の始めに分かった。一方において、この2変数のディリクレ級数は、Shintani (1975) の論文の中にある2変数のディリクレ級数のジーゲル保型形式版と見做すことができる。(Arakawa-Maki-Sato(2001)の論文の中で記述されているディリクレ級数は、量指標付きのケッヒャー・マース級数であり、本研究のディリクレ級数とは見かけが異なる)。T.Shintani により導入された2変数のディリクレ級数は、近年でもその拡張が研究されており、A_2 ワイル群多重ディリクレ級数との関係や複数の関数等式などが知られている。本研究の次数2のジーゲル保型形式に付随する2重ディリクレ級数についても、ワイル群多重ディリクレ級数との関係や、3つ以上の関数等式が期待されるが、その解明までには未だ至ってはいない。本年度においては、他のディリクレ級数との関連を調べるために、例えば、具体的な数値例の作成等を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の方針が頓挫している具体的な理由としては、次数2のジーゲル保型形式の場合に、アンドリアノフによって得られているディリクレ級数のある関係式を、量指標付きの場合に一般化することができていない事による。更に、研究以外の業務に時間をとられた為、本研究の時間を十分にとることができなかった事による。
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今後の研究の推進方策 |
アンドリアノフの関係式は一般次数であり、当該の研究では次数2の場合を扱っているので、量指標付きへの拡張が不可能であるとは思えない。また、ベッヘラーや伊吹山・桂田により、量指標のつかない特別な場合は一般次数でも分かっているので、その場合の明示公式を元に、クリンゲン型アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数の数値例を元に明示公式の形を予想する。クリンゲン型アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数の数値例はすでに既存の計算例が存在していたが、十分ではない為、自らも数式処理システムでのプログラムを組んで計算を行なった。また、ワイル群多重ディリクレ級数と保型形式に付随する2変数ディリクレ級数の関連も調べる。また関連して、一般次数のジーゲル保型形式に付随する多変数ディリクレ級数の解析的性質等を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、出張が制限された事による。今後の使用計画としては、「ジーゲル保型形式およびヤコビ形式」、「多変数ディリクレ級数」をテーマとした国際研究集会を開き、国内外の研究者との情報交換を進め、研究を行なっていく。
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