研究課題/領域番号 |
19K03426
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
尾角 正人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子群 / 超リー代数 / 結晶基底 |
研究実績の概要 |
今年度は2つの研究を行った。一つ目は境界付き1次元量子系の可解性を保証する反射方程式の解の研究である。まず、昨年度ほぼ計算が終わっていたAII型i量子群に付随する量子K行列とそのq->0極限で得られる組合せ論的K行列についての論文を修士1年の草野浩虎氏と共著で出版した。また、今年度から学振特別研究員PDとして本学に来ることになった渡邉英也氏が通常の量子群の結晶に類似の概念としてi量子群に対してi結晶という概念を導入したことを受け、このi結晶の組合せ論的K行列への応用を共同で研究することにした。この理論はまだi量子群が準分裂型といわれる場合にしか適用できる状態ではないが、その場合に入るアフィンAIV型の場合の対称テンソル表現のときに計算を実行してみると、直ちに対応する組合せ論的K行列の区分線形公式による具体式が得られ、この理論が有効であることが示された。この研究をさらに進めて現在は論文の執筆にとりかかっている。 もう一つの研究は頂点作用素代数に関するものである。この研究課題は当初の研究計画にはないものだったが、指導している修士2年の武中亮氏が頂点作用素代数について勉強をしていたこともあり、私が2000年頃に共同研究者とともに提出したアフィンリー環の最高ウェイト表現(最高ウェイトは頂点0に対応する基本ウェイトの正整数倍)の指標のフェルミ公式の予想の解決に応用できることが見込まれたので、計算を進め、捻じれがあるアフィンリー環の場合に一つのタイプを除き解決して論文にまとめた。この結果を導くための副産物として、主部分空間、パラフェルミオン部分空間の指標のフェルミ公式も得られた。ちなみに、捻じれがない場合は2020年にButorac-Kozic-Primcにより解決されいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究は研究計画調書に記したものからずれてきて、「i量子群の表現論、組合せ論的研究」と「頂点作用素代数の応用によるアフィンリー環の最高ウェイト表現の指標のフェルミ公式」を主な研究課題とした。これら2つの研究は順調に進展しており、また今後の発展も十分に見込めることから、進捗状況を(2)とした。一方で、当初の研究課題の一つである「アフィン量子超代数の表現論、q-振動子表現、超双対性」については遅れてはいるが研究協力者である Jae-Hoon Kwon氏と連絡を取りつつ共同研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
「i量子群の表現論、組合せ論的研究」については適応できる他の場合も多いので、組織的に研究を進める。「頂点作用素代数の応用によるアフィンリー環の最高ウェイト表現の指標のフェルミ公式」については最高ウエィト表現の基底が得られているが、これを応用してアフィンリー環に含まれる有限次元単純リー環の分岐関数のフェルミ公式が計算できないか検討する。「アフィン量子超代数の表現論、q-振動子表現、超双対性」については、コロナの状況も落ち着きを見せ始めているので、Kwon氏が在籍するソウル国立大学へ出張することも含め、遅れた研究を前進させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が大変多くなってしまったが、これはCOVID-19のため、国内の研究協力者との研究打合せ旅費、国際研究集会参加のための海外旅費の使用が、過去2年間にわたってほとんど0円になったためである。補助期間の延長申請も許可されたので、次年度は国内・海外旅費のために積極的に使用する。また、現在使用している古いデスクトップパソコンをオンラインでの研究交流に適したものに変えるためにも使用する。
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