研究期間全体を通して取り組んだ主な研究課題として、①境界付き1次元量子系の可解性を保証する反射方程式の解の研究と②量子アフィン(超)代数の表現論の研究がある。 ①については、研究期間前半で東京大学の国場氏や米山氏とともに3次元反射方程式からの2次元還元に関する量子K行列、また、そのq->0極限である組合せ論的K行列の研究を行った。後半では、学振特別研究員PDの渡邉氏、修士の草野氏とともに研究を継続した。最終年度では、量子K行列の場合に、基本表現に対応するものからレベルが高い表現に対応するものを構成するフュージョン構成法を具体的に書き下した。それとともに渡邉氏が新しく導入したi結晶という概念を効果的に活用し、アフィンA型対称テンソル表現の場合に現在適用可能なすべての準分裂型佐武図形に対応して、組合せ論的K行列の具体形を得た。 ②については、ソウル国立大学のKwon 氏との共同研究を行った。特に今年度はorthosymplectic超リー代数に付随するアフィン量子群の場合にq-振動子表現を含む適当な表現の圏を定義し、新しい表現の族を構成することができた。そして、超双対性の理論のアイデアを用いて、C型(D型)既約q-振動子表現とD型(C型)既約有限次元表現が、完全モノイダル関手によって互いに補間される関係にあることを明らかにした。これは古くから知られているHoweの双対ペアの理論の量子アフィン類似とみなすことができるものである。論文の完成は、年度内には間に合わなかったが、2023年4月に完成させることができた。この種の超双対性はB型など他のタイプにもあると予想され、また新しく構成された既約表現は(q-振動子表現ではまだ定義は曖昧だが)結晶基底を持つなどよい性質ももつことが期待されている。この研究課題の研究期間は終わってしまったが、この新しい研究を今後も更に発展させていく。
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