研究課題/領域番号 |
19K03428
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 志保子 東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (60202933)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 特異点 / 孤空間 / 食い違い数 |
研究実績の概要 |
双有理幾何学的観点から特異点の悪さを測る不変数である極小対数的食い違い数に関する研究を行った.この不変数は多様体の基礎体の標数にかかわらず定義出来るが,標数0の場合は特異点解消があるので,一つの特異点解消の上でこの不変数は計算できる.しかし正標数の場合はそれができない.そのため標数0の場合にわかっていることが正標数ではわからない,ということが往々にして起こる.本研究は標数にかかわらず成立する孤空間の公式を利用して.標数0の特異点と正標数の特異点の橋渡しをすることを目標にしている.本年の具体的な実績は以下のとおりである. 非特異曲面上の実イデアルの極小対数的食い違い数は,一回の重みつきブローアップで得られる,という川北の標数0における結果が正標数の場合にも成立することを示し,極小対数的食い違い数の集合が標数にかかわらず一定であることを示し,従って任意標数でも,非特異曲面上の実イデアルの極小対数的食い違い数の集合は ACC(昇鎖律)を満たすことを示した. これはRIMS-OIST ワークショップで発表した. 非特異多様体上の点に中心を持つ既約因子に注目し,正標数の体上の多項式を,既約因子での附値が同じになるように標数0の多項式に持ち上げることができるか,という問題に対して,既約因子がある条件を持てば正標数の任意の多項式が条件を満たすように持ち上げられることを示した. この問題を考える意義を,海南島(中国)での研究集会で発表した.またこの結果を,東大,城崎シンポジウム,数理研シンポジウムで発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の概要に書いた結果の後の最新の結果,(3次元非特異多様体上の実イデアルの極小対数的食い違い数に関するもの)を3月に予定していたジョーンズホプキンス大学での研究集会で発表し,出席予定であった関連する分野の研究者と議論をして,いくつかの不明部分を明確にしたいと思っていたが,COVID-19の影響で出張を取りやめた.このためこの部分が少し遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19 の状況が良くなるまでは,個人での研究に集中する予定である.その後は延期された研究集会に積極的に出席し一般次元の非特異多様体上の実イデアルの極小対数的食い違い数が,次元のみに依存する回数の重みつきブローアップで計算されることを示し.これを利用して正標数の多項式を望ましい性質を保存したままで標数0の多項式に持ち上げることができることを示したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた米国Johns Hopkins 大学における国際研究集会がコロナ肺炎のため中止となった.この研究集会はコロナ肺炎の感染収束後開催される予定なので,その時の旅費に当てる予定である.
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