研究実績の概要 |
代数多様体の特異点の双有理的不変量で重要な役割を持つ最小対数的食い違い数(minimal log discrepancy, 以後 mld と略する)を中心に研究を進めた.本研究は代数多様体の基礎体が標数0である場合と正標数である場合のmld の関係を明らかにすることによって,標数0の体上の特異点理論から正標数の特異点の性質を導き出そうという試みである. 本年度は非特異曲面と実イデアルのペアに対する mld の値の集合は任意標数で一致しているという結果を出版することができた( Math. Zeitschrift, 297, (2021) 389-397).また非特異3次元多様体とジェネラルな実イデアルのペアに対してmld をcompute する素因子が高々2回の重み付きブローアップで得られることを示し,Zoom による国際セミナー(ZAG seminar) とZoom による国際ワークショップ(Quantum Math, Singularities and Applications at OIST) で発表した.Mld をcompute する素因子を得るための重み付きブローアップの回数を一様に拘束(bound)する問題はMustata-Nakamura の予想の「重み付き版」ともいえるものである.Mustata-Nakamura 予想が成立すると mld の昇鎖律が成立するので双有理幾何学にとっても極めて重要な問題である.この予想の拘束は実イデアルの指数に依存しているが「重み付き版」の方の拘束(bound)は次元にのみ依存しているのが特徴である. 本年度は出席講演を予定していた国際研究集会がCOVID-19 のため中止や延期となり,口頭発表の機会は少なかったが,オンラインによるセミナーや議論を使って補ってきた.
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