Smooth variety とその上の coherent ideals の実指数を許した形式的積の対の不変数のなす集合のいろいろな性質は双有理幾何学において重要な問題である. これらの問題は標数が0の場合は未解決のものもあるが,特異点解消や,Bertini の定理,小平型のコホモロジー消滅定理などがあるため,比較的易しいと予想されている.一方正標数の場合はこれらのツールがないためほとんど未解決である. 本研究では正標数の場合に問題を標数0の場合に帰着させることを考える. 2022年度までは,smooth variety とその上のcoherent ``fractional ideals" の実指数を許した形式的積の対の不変数の集合の性質がわかれば正標数の smooth variety とその上のcoherent idealsの対に対して同様の性質が示されるところまで得られた. これらの結果や途中結果を,2021年フランスのLuminy 研究所,2022年米国のJohns Hopkins 大学の研究集会で発表した.また2023年3月に東京大学においてMini workshop on singularities を主催し,特異点の専門家たちと研究交流し最新の成果についての情報交換をした. しかし標数0の世界であっても``fractional ideals" は扱い辛く,その集合の性質はよく研究されていない.最終年度は 標数0の世界の``fractional ideals" の不変数の性質を調べる一方で,標数0の coherent ideals への帰着の問題に取り組み,この問題が,注目するprime divisor の登場するblowup空間の構造層のH^1 が消えていることが本質的であることがわかった.
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