研究課題/領域番号 |
19K03430
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
吉田 健一 日本大学, 文理学部, 教授 (80240802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | pgイデアル / 強楕円型イデアル / 正規還元種数 / 有理特異点 / 正規イデアル |
研究実績の概要 |
前年度に,研究代表者は,有理特異点の整閉イデアルの理論の拡張であるpgイデアルの理論を創設した奥間智弘氏(山形大学理学部教授),渡辺敬一氏(元日本大学文理学部教授)と共に(強)楕円型イデアルの理論を整備した。この理論は80年代のHunekeの研究などにも基礎的な部分は出現していたが,整閉イデアルのアンチネフサイクルを用いた表示や幾何種数を用いた幾何学的な定義を与えている点が本研究のオリジナリティが高い部分である。本年度はRossi氏(イタリアジェノバ大学教授)を加えて,強楕円型イデアルの特徴付けを与えた。例えば,強楕円型イデアルは正規還元種数が2の整閉イデアルのうち,ある種の「最小性」を持つイデアルとして特徴づけられる。他にもコホモロジーを用いた特徴づけや,付属する正規次数付き代数を用いても特徴づけることができる。Rees代数を用いた特徴づけも可能であると推測しているが,まだ未解決である。 また,強楕円特異点は,勝手な整閉イデアルが強楕円型イデアルかpgイデアルであるような正規局所環として認識することができる。一般にpgイデアルは正規イデアルである。強楕円型イデアルは必ずしも正規イデアルではないが,次乗が整閉であることと同値であることが分かった。実際,正規な強楕円型イデアルは,通常の還元種数が2のイデアルのうち,イデアルの次乗とイデアルと極小還元の積の余長さが1の正規イデアルと一致する。これらの結果のように,有理特異点ではない「比較的良い」特異点の整閉(正規)イデアルの全体としての構造に注目した成果が本研究の特色である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年まで2年間対面での研究集会が行われなかった影響と,コロナ禍で学務担当として遠隔授業の対策に多くの時間を割かざるを得なかったため,正標数の研究に関する部分の研究が遅れている。一方,整閉イデアルの研究としては,幾何種数が1の強楕円型特異点の概念をイデアルの範囲に拡張した楕円型イデアルを定義し,その特徴づけを得ることに成功するなど比較的順調に進んでいる。しかしながら,全体としては研究集会の参加ができなかったことから予算の消化は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況でも述べたように,整閉イデアルの正規還元種数を用いて定義される楕円型イデアル,強楕円型イデアルの研究は順調に進んでいる。このタイプのイデアルのコアを研究する方針を進めている。コアについてはHyryーSmithの代数幾何学的な視点からの研究,PoliniーUlrich,Hunekeらによる可換環論的な視点からの先行研究が多くある。これらの学習会を企画したい。また,令和4年度に入ってからはいくつかの研究集会も復活しつつあり,自身だけでなく他大学の若手研究者の支援も積極的に行うことにより,共同研究者を増やし,本研究の活性化を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で研究代表者が所属するほとんどすべての研究集会が対面で行うことができず,オンラインで実施された。そのため,予定していた旅費を使用することができなかったため。 次年度は可換環論シンポジウムを含むいくつかの研究集会が対面で行われる予定であるので,本研究費を使用して参加したいと考えている。また,本研究費を使用して,楕円型イデアルのコアの研究に関する勉強会を企画したいと考えている。さらに,国際研究集会でのオンライン参加,本学部で行われる特異点セミナーのハイブリッド化への対策も検討している。
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