研究課題/領域番号 |
19K03433
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小関 祥康 神奈川大学, 理学部, 助教 (00614041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アーベル多様体 |
研究実績の概要 |
本研究は、数体あるいは p 進局所体上のアーベル多様体の、「十分大きい」体に値をとる有理点の成す Mordell-Weil 群のねじれ部分群を考え、その有限性および可除部分群の消滅性を考察することを主な目的としている。今年度はねじれ部分群の有限性に関する昨年度の結果をより一般化することに成功し、さらに可除部分群の話についても大きな進展を得ることができた。以下にこれらについて述べる。 (1)ねじれ部分群の有限性について:k を p 進局所体とし、k の与えられた素元πに付随する k 上の Lubin-Tate 拡大体を L とする。本年度の一つ目の成果としては、以下のような性質を満たすπの十分条件を与えることが出来た点が挙げられる:性質『任意の p 進局所体 K と任意のK 上の代数群 G に対して、G(LK) のねじれ部分群は有限になる。』昨年度は代数群よりも狭いクラスである潜在的に良い還元をもつアーベル多様体に限って、同様の結果を示していた。そのときの議論に非アルキメデスリジッド一意化と代数群の構造定理を織り交ぜることで、本結果にたどり着くことができた。プレプリントは現在作成中の段階である。 (2)可除部分群の消滅性について:この件については東京工業大学の田口雄一郎氏と「クンマー忠実体に関する理論」としてそれなりに長い期間共同で研究を進めていたのだが、プレプリントをようやく完成することができた。すでに論文として投稿しており、現在は査読の結果を待っている状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ねじれ部分群の有限性に関する昨年度の結果を、アーベル多様体から一般の代数群へと拡張することができないかと考えた。鍵となるアイデアの原型は昨年度の時点で思いついてはいたものの、実際に証明を行う際には精密な議論が必要であったため想定していたほどに簡単にはいかず、昨年度の時点では解決できなかった。この点をリジット幾何からくる帰結を用いることで克服することに成功し、プレプリントを現在作成中である。また、田口雄一郎氏との共同研究に関してもプレプリントを完成することができ、雑誌へと投稿することができた。以上の点から、研究は順調に進んでいるものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主に大きな体に値をとるアーベル多様体や代数群の Mordell-Weil 群のねじれ部分群がはたして有限になるか否かという問題を扱ってきたが、では有限になるとしてその位数はどうなるのかという問題がある。これに焦点を当てていきたい。そのためにはこれまで以上に精密なガロア表現の考察が求められる。とくに、アーベル多様体に付随するmod p 表現の考察も必要不可欠であると思われる。一般論から一気に解決していくという方針は現時点では難しいように思われるため、「大きな体」として円分拡大体、代数群として楕円曲線のように、手をつけやすいものから焦ることなくじっくりと考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はもともと旅費に多くを割き申請させていただいていた。しかし新型コロナウイルス感染症の影響により多くの研究集会が遠隔で行われることとなり、出張する機会が全くなかった。そのため想定していたよりも大幅に本研究費を使用する機会が減ることとなり、それが次年度使用額が生じた理由である。 次年度の使用計画について述べる。まずパソコンを購入する。これは現在のパソコンの動作が不安定になっているため、論文の作成等で支障をきたしているためである。また、新型コロナウイルス感染症に対する状況次第ではあるが、沖縄で行われる東アジア数学会議(EANTC)等への出張予定があり、その旅費として使用予定である。
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