最終年度も引き続き多重ゼータ/L値の根付き木写像の基礎整備、および補間多重L値の特殊値や関係式に関する研究を行った。詳細は以下の通り。 (1) 多重ゼータ値についての根付き木写像の調和積代数における解釈や、あるinvolutionの共役としてantipodeを特徴付けることに関する村原英樹氏(北九州市立大学)との共同研究の成果がThe Ramanujan Journalより出版された。 (2) 多重L値についての根付き木写像を新たに定義し、そのantipodeが多重L値の間の線形関係式を与えることを証明した。これは若林徳子氏(大阪電気通信大学)との共同研究である。本研究成果は今年度Journal of Number Theoryより出版された。その後に村原氏も加わって、調和積代数を駆使して多重L値についての根付き木写像そのもの(つまり、antipodeとしてではないもの)が多重L値の間の関係式を与えていることの証明もできたが、これについては現在論文投稿中である。 (3) 伊藤慎也氏(京都産業大学大学院の元院生)および若林徳子氏との共同研究により多重L値の多項式補間という対象を新たに構成し、いくつかの特殊値決定や関係式導出を行った。本研究成果は今年度Acta Arithmetica誌への掲載が決定した。 根付き木写像については、それらの間の関係式の特定問題や双対Hopf代数の観点からの研究など、やるべき課題はまだ残っている。しかしながら、研究期間全体を通じて根付き木写像の基礎整備という目的は概ね達成されたと思っている。補間多重L値という脇道の研究成果を出すこともできた。
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