研究課題/領域番号 |
19K03438
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
深澤 知 山形大学, 理学部, 准教授 (20569496)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガロア点 / 自己同型群 / Weierstrass 点 / ガロア群 / 射影 / 正標数 / 準ガロア点 / ガロワ点 |
研究実績の概要 |
ガロア点を用いた代数曲線の分類理論、および他分野との関係の創出、を推進した。平面曲線に対して、射影平面の点からの射影による関数体の拡大がガロアであるとき、その射影の中心点をガロア点という。 1996年に吉原久夫氏によりガロア点が導入されて以来20年ほど、ガロア点を2つもつ平面曲線の具体例はあまり多くは知られていなかった。2016年に、著者により「2つのガロア点を伴う(平面への)双有理埋め込みの存在」判定法が発見された。この判定法を種々の代数曲線に適用することにより、ガロア点を2つもつ平面曲線の例がたくさん構成された。 今年度の成果として、この判定法の拡張といえる2つの結果が得られた。「一直線上にない3つのガロア点の存在判定法」および「与えられた代数曲線が(別の)平面曲線の2点のガロア閉包として実現される判定法」である。後者は東根一樹氏、高橋剛氏との共同研究である。以下、前者について詳しく述べる。 2016年に上記判定法が完成した後の早い段階から「ガロア点を3つもつ判定法」の定式化が自然な課題となったが、すぐには解決されなかった。ここで「3つ」の状況は「3点が一直線上にない(三角形をつくる)」場合と「3点が一直線上にある」場合の2つあることに注意する。今年度の著者の成果により前者の場合、つまり「一直線上にない3つのガロア点を伴う双有理埋め込みの存在」判定法が理想的な形で得られた。そして実際に、ガロア点を3つもつ平面曲線を新たに発見した。さらに「3つのガロア点の群による三角形への作用」の条件によって、フェルマー曲線が特徴づけられることを示した。「3点が一直線上にある」場合については、ひとつの必要十分条件を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一直線上にない3つのガロア点をもつ判定法の完成は、ガロア点理論における、期待されていた(が、実際にはどのように定式化されるべきかわからなかった)進展である。これにより「ガロア点はいくつあるか?」というガロア点理論の基本問題、特に、3つのガロア点をもつ平面曲線に対する今後の研究進展が大いに期待できる。ガロア点研究においては、関連する種々の定義や状況設定を理解するための用語自体は(基礎理論である代数幾何においては珍しく)平易であるのに、実際に「どう研究をすすめるか」という代数幾何における標準的手段が整っていないことに難しさのひとつがある。今回の結果はその標準的手段を提示しているとも言える。吉原氏によるガロア点理論の創始、吉原氏と著者を中心とした「非特異平面曲線のガロア点配置確定」、著者による「ガロア点を2つもつ」判定法の発見、の流れに続く「中心的進展」と言っても過言ではないと考える。 研究計画当初は、このような判定法までは道のりが長いと予想し(予想外に早かったがそれにしても2年半以上かかっている)、Weierstrass 点の状況を詳しく調べ、それによる地道な研究成果を積み上げていく予定であった。予想外にも Weierstrass 点自体の結果はあまり必要ではなく、大きな結果が得られてしまった。当初予定の地道な結果は逆に多くは得られてないので、総合的に判断し、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた判定法を用い、3つのガロア点をもつ平面曲線の構成を考える。一方、研究計画当初の Weierstrass 点との関係の研究も同時並行で進める。ガロア点とそれ以外の研究分野(群論、有理点、符号理論)との関係性についての研究も進展させたい。有限体上の代数曲線の研究と関連づけて、Borges 氏と創始した「Fronbenius nonclassical 曲線のガロア点」についても研究を実施する。2014年に著者が提示した「ガロア点と有理点が一致する平面曲線の分類」問題についても、「3つ」の判定法との関連から、新たな進展が望まれる。 コロナウィルスの影響で、研究討論のため検討していたイタリアやブラジルへの渡航が難しい状況にある。令和2年度中はかなり厳しいと思われるため、令和2年度は主に独立での研究または遠隔会議で対応し、令和3年度の渡航も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由を一言でまとめると、Windows 10へのアップデートとコロナウィルスの影響で、研究費の使用計画を年度内に複数回練り直す必要が生じた、ということになる。 研究開始当初に計画していた国内旅費と設備備品費(図書購入費)を、(Windows 7 のサポート終了のため) Windows 10 搭載のパソコン購入に変更することにした。しかしながら、既に所持しているパソコンを無料でアップデートすることで、急いで購入する必要がなくなった。それによって国内旅費に使える費用が復活し、国内旅費に使用することを考えていたが、コロナウィルスの影響で、3月中の出張が不可能になった。 したがって今年度未使用額はパソコンの費用、或はそれに代える予定であった国内旅費、と言える。次年度は、本来はこれらを(最初に計画していた)旅費に使用したいところだが、コロナウィルスの影響によりそれもしばらくは難しい。したがって、遠隔会議システム利用を中心とした設備備品費として使用したいと考えている。
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