研究課題/領域番号 |
19K03438
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
深澤 知 山形大学, 理学部, 准教授 (20569496)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガロア点 / 自己同型群 / Weierstrass 点 / ガロア群 / 射影 / 正標数 / 準ガロア点 / ガロワ点 |
研究実績の概要 |
ガロア点を用いた代数曲線の分類理論、および他分野との関係の創出、を推進した。平面曲線に対して、射影平面内の点からの射影が誘導する関数体の拡大がガロアであるとき、射影の中心点をガロア点という。3次元射影空間内の曲線に対して類似の概念としてガロア直線が定義される。令和2年度は次の5つの成果があった。 (1) Artin-Schreier-Mumford 曲線(以下、ASM 曲線)を3次元射影空間に(ある意味自然に)埋め込んだときの、ガロア直線をすべて決定した。これまでガロア直線がすべて決定された例は Giulietti-Korchmaros 曲線のみであったため、それに続く例を提供することに成功した。 (2) Montanucci-Zini により与えられた generalized ASM 曲線の自己同型群決定について、初等的な証明を与え、標数2でも同様の結果が成り立つことを証明した。Montanucci-Zini の証明には標数が3以上であることが仮定されていた。応用として generalized ASM 曲線を3次元射影空間に埋め込んだときのガロア直線をすべて決定した。 (3) Hermitian 曲線のある種の elementary abelian p-cover を考察し、ガロア点を q^2-q 個もつことを発見した。他にも p-rank、Frobenius nonclassicality、arc といった重要な性質を調べ上げた。この曲線においては p-rank は正であり、種数 g を無限大にもっていったときに自己同型群の位数も無限に大きくなる。 (4) 曲線上の非特異ガロア点と外のガロア点による2つの群が半直積を生成する場合に、平面曲線を分類した。 (5) 対称群や交代群を2つの外ガロア点の群にもつ平面有理曲線を、脇克志氏との共同研究によって発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASM 曲線のガロア直線、generalized ASM 曲線のガロア直線に関する結果、Hermitian 曲線の p-corver のガロア点配置に関する結果、ガロア点を複数持つ有理曲線の構成、はガロア点やガロア直線を複数または多数もつ状況をそれぞれに提示しており、分類理論の基盤となる結果といえる。また、2つのガロア点の群が半直積を生成する平面曲線の分類の結果は、分類理論のひとつの実行である。研究計画当初には Weierstarass 点がもっと表に出る予定であり、それとはやや異なる展開ではあるが、分類理論の研究は順調に進展したと言える。 他分野との関係に関しては、generalized ASM 曲線の自己同型群への貢献と、Hermitian 曲線の p-cover に関する種々の結果(自己同型群、p-rank、Frobenius nonclassicality、arc)により大きく進展した。Frobenius nonclassicality や arc といった概念は有限幾何の概念であり、ガロア点と有限幾何を結び付けた点は、本研究が注目されてよい成果であると思われる。他分野との関係においても順調に進展したと言える。 以上の成果により本来であれば「当初の計画以上に進展している」に分類できたかもしれない。しかしながらコロナウィルス対応により、計画していた、海外・国内研究者との対面での議論が不可能となってしまった。この影響が今後本研究にどのように反映されるかわからないので、慎重に「順調に進展している」に分類した。
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今後の研究の推進方策 |
海外・国内研究者との対面交流はコロナウィルスの影響で不可能であると見込まれる。したがって、メールや会議システムでの交流となる。この影響は目に見えず、令和3年度の研究実施段階では現れて来るかどうかわからない。 研究の進捗は現段階ではマイナス要因が見えないが、継続して、ガロア点を用いた代数曲線の分類理論、および他分野との関係の創出、を推進する。令和元年度に得られた「3つのガロア点をもつ判定法」を活用し、ガロア点と Weierstrass 点の関係の研究を継続する。ガロア点と Fronbenius nonclassicality や arc との関係についても研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で、海外・国内の研究者との対面での打ち合わせが不可能となった。本研究の計画段階から費用のほとんどは「旅費」であったこと、学内の研究費に対しても同様の理由で余剰が出てそちらで物品等の費用が賄えたことから、科学研究費交付額の大部分は未使用となった。 研究実施状況は、今後どのような影響が出てくるか不明であるが、一定以上順調に進んでいる。一方、対面での打ち合わせが不可能であることが令和3年度も継続されると見込まれる。以上の2点から、令和3年度単独の交付額にも余剰額が出ると思われ、3年間を通じて交付額のかなりの部分を返還することになると思われる。
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