ガロア点を用いた代数曲線の分類理論、および他分野との関係の創出、を推進した。平面曲線に対して、射影平面内の点からの射影が誘導する関数体の拡大がガロアであるとき、射影の中心点をガロア点という。3次元射影空間内では直線からの射影を考え、ガロア直線を定義することができる。令和4年度は次の4つの成果があった。 (1) 正標数の曲線 y^{(q+1)/2}=x^q-x(標数pを3以上とし、qはpのべきとする)の3次元射影空間モデルに対するガロア直線配置を完全決定した。付随して、3次元射影空間内の点からの射影を考察することにより、この曲線の3種の平面モデルのガロア点配置を確定した。この3つの平面モデルは、ガロア点を3つ以上もつ平面曲線の新しい例となっている。 (2) ガロア点を一般化した「準ガロア点」に関して、非特異平面曲線に対してその個数を調査した。特に、準ガロア点に付随する群の位数が3以上のときに、準ガロア点の個数の可能性を確定した。これは三浦敬氏、高橋剛氏との共同研究である。 (3) 2つの外ガロア点に付随する群が半直積を生成するときの平面曲線の分類について、かつて誤りのあった議論を修正した。特に標数零の場合に、平面曲線の定義式を完全決定した。この修正において曲線 x^m+y^{2m}=1 が「ガロア点を2つもつ平面モデル」を2種類もつことを明らかにした。これは Pietro Speziali 氏との共同研究である。 (4) 射影によるガロア群が4次交代群となるような点を2つもつ5次平面曲線の例を、世界で初めて構成した。 本年度の科研費は前年までの期間延長を申請したものであり、それが認められたお蔭で、2023年1月までの10か月間の研究支援者雇用に充てることができた。研究支援者と上記に関して議論を行うことができ、証明に関して論理の整理や再現性の確認を行うことができた。
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