今年度は,クラスター代数の離散可積分系と表現論への応用に関して,3次元の可積分性を実現する四面体方程式および3次元反射方程式の解を構成するという新しい研究を開始した.Sunと八木は,2022年にA_3型ワイル群の最長元に付随した配線図にtriangle,square,butterflyという3種類の箙を配置し,量子クラスター代数を用いて四面体方程式の解を構成する方法を提唱した.国場敦夫氏,寺嶋侑二氏との共同研究でこの方法を発展させ,Fock-Goncharov箙とsquare箙の場合に,量子y変数をqワイル代数で表すことにより,四面体方程式の解をある作用素Rの随伴作用として表すことに成功した.さらにSun氏と八木氏も加わった共同研究で対称化したbutterfly箙の場合に同様の結果を得た.これらの結果を3本の論文にまとめた.離散可積分系の対称性に関して、2023年4月にウィーン大学シュレディンガー研究所で開催された研究集会「Non-commutative Geometry meets Topological Recursion」において,3回の連続講義を行った.クラスター代数の表現論への応用に関して,2023年7月にカリフォルニア大学デイビス校で開催された研究集会「FPSAC2023」で招待講演を行った.
2019~2023年度の研究期間全体を通じた成果は以下のようにまとめられる.(1)有限次元単純Lie環に付随したワイル群を周期的な箙のクラスター変異として構成し,その離散可積分系と量子群のq指標への応用について2本の論文にまとめた.特にqが1の冪根のとき,q指標がワイル群作用で不変であることを証明し,q指標を含むある環のワイル群不変部分を特定した.(2)量子クラスター代数とqワイル代数を用いて四面体方程式および3次元反射方程式の解を構成し,上述のように3本の論文にまとめた.
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