代数関数体の内部構造を調べるために、吉原久夫氏 (新潟大学名誉教授) は、射影平面内の完備代数曲線 (以下、単に平面曲線と記述する) に対して、 「ガロア点」 の概念を導入した。さらに射影空間内の射影代数多様体に対する 「ガロア部分空間」 など、いくつかの拡張された概念が提案され、ガロア点に関係する研究が活発に進められてきた。 深澤知氏 (山形大学) と三浦敬氏 (宇部工業高等専門学校) と私は、平面曲線に対する 「準ガロア点」 をガロア点の拡張として定義し、準ガロア点に付随する群や、準ガロア点の個数、分布などを研究した。最終年度には、準ガロア点の個数や分布について得られた結果をまとめた論文を、学術雑誌に投稿することができた。 米田二良氏 (神奈川工科大学名誉教授)と私は、3次元射影空間内の非特異6次曲線の「ガロア直線」の本数と分布についての研究を行った。先行研究としては、吉原氏による、3次元射影空間内の非特異完備代数曲線のガロア直線の基本的研究があった。しかし、ガロア直線の問題として最もシンプルな場合である、非特異6次曲線に対して、ガロア直線の本数や分布はまだ決定されていなかった。我々は、非特異6次曲線に対してガロア群が巡回群となるガロア直線について、その本数と分布を決定することができた。得られた結果は学術雑誌に掲載された。さらに、最終年度には、加藤正太郎氏(新潟大学工学部4年生)との共同研究で、巡回群ではないガロア群となるガロア直線の最大本数をコンピュータ計算を利用することで決定できた。 池田愛輝氏(新潟大学博士課程学生)との共同研究で、射影平面内の可約で被約な代数曲線に対して、「同時ガロア点」を定義した。代数曲線の各既約成分が非特異平面曲線の場合 (ただし、楕円曲線を除く) に、同時ガロア点の個数を決定することができた。結果を論文にして、学術雑誌にアクセプトされた。
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