研究実績の概要 |
2019年度は主に以下の4件の研究を行った。(1)局所環の大準同型写像(large homomorphism)を誘導するイデアルの特徴付けを完全交差環、Golod環、Koszul環上でKoszulホモロジーを用いて行った。(2)可換ネーター環の加群圏のn広大部分圏の概念を導入し、素イデアルスペクトラムの特殊化閉部分集合のコホモロジー次元(cohomological dimension)がn以下になる条件を考察した。(3)準射影次元という新しいホモロジー不変量を導入した。これは、射影次元、G次元(Gorenstein dimension)、完全交差次元などの類似物である。完全交差局所環上ではそれがいつでも有限値をとること、任意の可換ネーター局所環上でAuslander-Buchsbaum等式(Auslander-Buchsbaum formula)とAuslanderの深度等式(depth formula)をみたすことを示し、準射影次元が有限な加群のTor,Extの消滅を、主にそのrigidityについて詳しく調べた。Extに関しては消滅の対称性についても論じた。(4)可換ネーター環の導来圏のn一様部分圏、素イデアルスペクトラムのn連接部分集合の概念を導入し、(2)で述べた加群圏のn広大部分圏との関係をさまざまな角度から考察した。一つの帰結として、Angeleri Huegel-Marks-Stovicek-Takahashi-Vitoria, Gabriel, Krause, Neeman, Takahashiが与えた局所化部分圏、smashing部分圏、双反射的Giraud部分圏などの分類定理を一つの図式の一部として組み込むような部分圏分類定理を証明することができた。
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