研究課題
2020年度は以下の6件の研究を行った。(1)Moderate関数という可換環のSpec上の自然数値関数を考案し、加群圏の支配的分解部分圏の完全分類を非常に弱い仮定をみたす任意の可換ネーター環に対して与えた。これは、2015年にIMRNに出版したDao氏との共著論文で与えたCohen-Macaulay環上の支配的分解部分圏の分類を包括する内容である。(2)非自明な分解部分圏の共通部分がいつ非自明になるかという素朴な問題を調べた。そして、そのような完全交差環は超曲面に他ならないことを示し、TorとExtの消滅の自明性と密接な関係にあることを突き止めた。さらにその結果を加群圏の有界導来圏および特異圏に応用し、非自明なthick部分圏の共通部分の非自明性に関する結果を得た。(3)アーベル圏の反変有限部分圏の有限表示加群圏がアーベル圏になるのは古典的事実であるが、それの逆がいつ成り立つのかを可換ネーター局所環の有限生成加群圏の分解部分圏に対して調べ、肯定的解答および否定的解答を多く得た。(4)カンザス大学のDey氏との共同研究で、Auslander-Bridger理論において主役を担うnねじれ自由加群のなす部分圏の構造を調べた。nシジジー加群のなす部分圏およびSerreのS_n条件をみたす加群のなす部分圏と結び付け、各種の閉性を論じ、環の構造との関連を調べた。(5)同じくDey氏と行った共同研究で、2015年にForum Math. Sigmaに出版したDao氏との共著論文で示した孤立特異点(つまり環の特異軌跡が0次元)の特徴付けを高次元化する結果を得た。(6)岡山理科大学の荒谷氏との共同研究で、(m,n)ねじれ自由加群の特徴付けを与え、全反射加群および節減Gorenstein次元に応用した。そして上節減次元の概念を導入し、完全交差環およびAB環との関係を調べた。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」で述べたことはいずれも研究題目そのものに関する研究成果であるか、研究題目と密接に関係する研究成果である。
今後も可換ネーター環の加群圏と導来圏における生成問題に取り組んでいく。2020年度はより基本的である加群圏における生成問題を重点的に行い非常に多くの知見を得たので、2021年度も引き続きこの方針で研究を進めていく。
コロナ禍の影響により、予定していた国内外の出張がすべてキャンセルとなったため。
すべて 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 15件、 査読あり 21件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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