研究実績の概要 |
2022年度は以下の研究を行った。 (1) 標数が素数pであり剰余体が完全体であるようなd次元可換Noether局所環RのFrobenius写像Fが有限射になる場合に、Fのpushforward F_*が有限生成R加群の有界導来圏上に定める自己関手の(Dimitrov, Haiden, Katzarkov, Kontsevichの意味での圏論的)エントロピーが、パラメーターの値に依らずd log pという値になることを示した。これはMajidi-Zolbanin, Miasnikov, Szpiroが導入した局所エントロピーの値と一致する。 (2) Cesnaviciusの意味でのCM優秀な可換Noether環上の有限生成加群に対して川崎健が2008年に示したFaltingsの零化域定理を鎖複体に拡張した。これはDivaani-Aazar, Zargarが2019年に双対化複体の存在を仮定して示した定理を包括する。応用として、CM優秀な可換Noether環上の有限生成加群の有界導来圏の(Beilinson, Bernstein, Deligneの意味での)t構造を完全に決定した。これは2010年にAlonso Tarrio, Jeremias Lopez, Saorinが双対化複体の存在を仮定して示した定理を包括する。 (3) 可換Noether局所環Rの正準加群Kのn捩れ自由性を調べた。RがCohen-Macaulayの場合は、Kのn捩れ自由性はRが(G_{n-1})条件をみたすことと同値になることが1974年にFoxbyによって示されている。今回、Kが(S_n)条件をみたすことのみを仮定して、Kがn捩れ自由であること、Kがnシジジーであること、そしてRがKの台の上で(S_{n-1})条件と(G_{n-1})条件をみたすことが同値であることを示した。
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