研究課題/領域番号 |
19K03448
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉野 雄二 岡山大学, 自然科学研究科, 特命教授 (00135302)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DG代数およびDG加群 / ホモトピー圏 / 導来圏 / シジジー / ホモロジー代数 / 三角圏 / Cohen-Macaulay加群 |
研究実績の概要 |
可換ネータ環上のホモロジー代数において基本問題として残っているAuslander-Reiten予想をDG加群の持ち上げ問題という視点から考察をするというのが本研究課題の独自な研究方針である。この方針に沿って、可換環のテイト分解として得られるような強可換DG代数について、その上のDG加群の持ち上げ問題に関してはいくつかの成果が本研究によって得られている。 与えられたDG代数上一変数の自由拡大となる強可換DG代数上のDG加群の持ち上げに関しては、添加される変数が奇数次数のときには、研究代表者とSaeed Nasseh氏による共同研究(Journal of Algebra (2018)) で明らかにされていたが、これに付け加えて、添加される変数が偶数次数のときにも予想される結果が証明され、研究代表者と小野舞子氏の共著として発表された。(Journal of Algebra, 566 (2021), 342-360). 上記の二つの発表論文は, John Tateの仕事を参考に j-operator の理論を構築し、持ち上げの障害類をホモロジー加群の中で j-operator を使って表示することによってなされたのだが、最近になってこの二つの論文の内容を統合した新しい j-operator の理論を構築し変数の次数に依らない証明を発見した。 その上、このアイデアをさらに深く考察し直してnaiveな持ち上げ理論に至った。この naive lifting theory は、研究代表者と上記の二人の共同研究者との共著の形で一連の研究が進行中である。今まで一変数のときに成立し多変数でも成立すると考えられていた持ち上げ定理が、有限変数の自由拡大または有限変数の多項式拡大においてもnaiveな持ち上げの意味で成立することが証明できた。これらの成果は国際的な査読付き雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
強可換なDG代数上のDG加群に関する「持ち上げ問題」に関して、一変数の場合に予想していた成果が得られたばかりではなく、多変数の場合に道を拓く方法があることがわかった。これは研究実績の概要で述べたように、 j-operator 理論の精密化と naive lifting という新たなアイデアの導入によるものである。 本研究課題のような理論構成と予想解決を目指す研究においては躍進的な進化であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
可換環のTate分解によって得られるようなDG代数、すなわち多変数(一般的には可算無限個の変数)による自由拡大によって得られるような強可換DG代数の上のDG加群のnaiveな持ち上げについては、昨年までの成果で有限変数の場合には解決したと言って良い。問題は変数が(可算)無限個の場合である。これについてはホモトピー極限などの理論を応用することも考えられるが、正しい方向性を模索中である。いずれにしても、長年問題であったAuslander-Reiten予想の解決につながる理論の構成を目指すことに変わりはない。 経費については、共同研究者との研究打ち合わせのための出張や研究成果発表および意見の聴取を目的とした学会・研究集会への参加に係る諸費用およびオンライン機器の充実のためにほぼ全額を使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を予定していた国内学会および研究会が、新型コロナウイルスのために休止またはオンライン開催となった。次年度分の学会および研究会のための旅費およびオンライン機器の充実にこれを使用する。
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