研究課題/領域番号 |
19K03451
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
河田 成人 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50195103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有限群 / 表現論 / Auslander-Reiten有向グラフ |
研究実績の概要 |
Gで有限群を表し、pは有限群Gの位数を割り切る素数とする。完備離散付値環Rの極大イデアルはπで生成され、その剰余体k = R/πRは標数がpであるとする。有限群Gの完備離散付値環R上の整数表現において、Scott 加群と呼ばれるRG-加群は重要な役割を果たす。Gのp-部分群Qに対し、Qをヴァーテックスとして持つScott RG-加群Sとは、自明なRQ-加群を誘導して得られる置換RG-加群の直既約因子であって、そのheadとsocleが自明な加群となっているものである。なお、直既約RG-表現加群Vに対し、Gの部分群の集合 { H≦G : VはH-射影的 } には極小なものが一意的に存在するが、この極小部分群をVのヴァーテックスと呼ぶ。直既約加群を点とし既約写像を矢と見なして構成されるAuslander-Reiten有向グラフにおいて、Sを含む安定連結成分Θは半平面的に無限に広がる格子型の形状をしており、SはΘの端点に位置していることが知られていた。このΘについて考察を進め、特に、Θを構成する直既約RG-表現加群LがΘの端点に位置しなければ、LのヴァーテックスはQのGにおける正規化群のSylow p-部分群であることを示した。さらに、kG-加群L/πLの直既約分解において、全ての直既約因子はQ-射影的であり、その中の少なくとも一つの直既約因子のヴァーテックスはQであることも確かめた。また、Scott RG-加群Sで終わるRG-表現加群の概分裂短完全列とScott kG-加群S/πSで終わるkG-表現加群の概分裂短完全列について並行して調べ、それらの構造や性質および類似性などについて研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Auslander-Reiten有向グラフにおいてScott加群を含む安定連結成分を構成する直既約加群の性質やScott加群の概分裂短完全列の構造を調べることができた。得られた結果を踏まえて、テンサー積との関連性を考察することで、ある種の直既約加群の概分裂短完全列やAuslander-Reiten連結成分の性質が詳しく分かるようになると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
有限群の表現論において、テンサー積をScott表現加群に関連させて研究を推し進めることにより、一般の直既約加群のテンサー積の性質や構造の解明につながることが期待できる。そのため、Auslander-Reiten理論を活用して、概分裂短完全列のテンサー積の研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で旅費を使用できなかった。研究集会が開催されたり、対面で研究打ち合わせができるようになれば旅費を活用して研究を進展させたい。
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