研究実績の概要 |
至る所消えない正則2形式を持ち,不正則数が零であるようなコンパクト複素曲面をK3曲面という.K3曲面はかならずしも代数的とは限らないが,本研究で扱うような自己同型の存在を仮定すれば,K3曲面は自然に代数的となる.当該年度に実施した研究は大きくわけて2つである.一つ目は(1)「K3曲面上の有限自己同型が最大位数であるとき,その自己同型による商曲面の考察」であり,二つ目は(2)「puler ではない位数6の非シンプレクティック自己同型の考察」である. (1)で扱うべき自己同型の位数が66であることは既に知られていたが,商曲面の局所的な様子は不明であった.66の約数のうち2, 3, 6, 11, 22, 33を位数にもつ自己同型情報を使い,特異点の個数とタイプを決定した.ここではLefschetzの公式を使う方法と直接計算する方法の2通りの方法を示した.なお商曲面そのものは指数11の対数的Enriques 曲面である.この研究はMATHEMATICAL REPORTSへの掲載が決定している. 有限位数nの自己同型が至る所消えない正則2形式へ1の原始n乗根で作用する場合にその自己同型をpulerな非シンプレクティック自己同型という.(2)ではpuler ではない位数6の非シンプレクティック自己同型を調べたが,すなわち至る所消えない正則2形式へ-1倍で作用する自己同型と1の原始3乗根で作用する場合である.それぞれの固定点集合のタイプを決定し,具体例を構成した.また固定点集合だけ見ていてはこの手の自己同型の分類が難しい,という示唆も与えた.これは論文形式にし,現在投稿中である.
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