研究実績の概要 |
至る所消えない正則2形式を持ち,不正則数が零であるようなコンパクト複素曲面はK3曲面と呼ばれる.K3曲面の対称性を表す自己同型は,至る所消えない正則2形式に自明に作用するか否かでシンプレクティックまたは非シンプレクティックと呼ばれる.特に位数mの自己同型が至る所消えない正則2形式に1の原始m乗根倍で作用する場合,純(pure)非シンプレクティックと言う.シンプレクティック自己同型および純非シンプレクティック自己同型は「おおよそ」分かっているという状況であるが,純ではない非シンプレクティック自己同型の考察は前年度に本研究課題で得られた位数6の結果程度しか組織だった研究結果は出ていない. 当該年度に実施した研究は主に「純ではない奇数位数の非シンプレクティック自己同型の考察」である.K3曲面上の有限自己同型のうち,純ではない非シンプレクティック自己同型が奇数位数であれば,それは15か21であることを示した.言い換えれば位数9, 25, 27, 33の場合は純な非シンプレクティック自己同型にしかなり得ないことがわかった.また,自己同型の研究ではその固定点集合が重要な役割を果たすが,位数9の場合は1,4または6個の孤立点からなり,位数21の場合は6個の孤立点からなる.これらの点への自己同型の局所的な作用(商曲面にどのような特異点が現れるか)も決定した.存在に関しては具体例を構成することによって示した.これは論文形式にし,現在投稿中である.
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