研究課題/領域番号 |
19K03459
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩谷 隆 東北大学, 理学研究科, 教授 (90235507)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ボックス距離 / オブザーバブル距離 / 測度の集中現象 / 測度距離空間 / 群作用 |
研究実績の概要 |
今年度は群作用をもつ測度距離空間の収束理論を確立した(中島氏と共同).先行研究として,深谷氏による等長的群作用をもつコンパクト距離空間の収束理論があるが,我々の研究では測度の構造も考えるので,それに比べて難易度が高い.我々が考える群作用としては等長的かつ保測で効果的なものを考える.本研究では,群作用をもつ測度距離空間が2つ与えられたとき,それらの間のボックス距離とオブザーバブル距離を導入した.従来,この種の距離の定義ではGromovによるパラメータの概念を用いていたが,そうすると距離の非退化性の証明が困難となる.そこで,最適輸送理論を用いて定式化することで非退化性の証明を可能とした.一つの主定理として,群作用をもつ測度距離空間の列がボックス距離(オブザーバブル距離)で収束するとき,商空間もボックス距離(オブザーバブル距離)で収束することを示した.この定理の応用として,次元が無限大へ発散するようなレンズ空間の列で無限次元複素射影空間の錐へ収束するようなものを構成した.これは距離空間の列としては成立せず,測度距離空間の特有の例となっている.もう一つの主定理として,群作用をもつ測度距離空間の列が与えられて,その測度距離空間の列が(測度なしで)ボックス収束するときに,極限空間にある群作用が存在して群作用つきでボックス収束することを示した.以上に述べた結果についてプレプリントを執筆し,数日前にarXivへ投稿した.プレプリントを見てくださった数川氏(阪大)からいくつかの不備を指摘されたが,本質的な間違いなどはなく,近日中に修正し雑誌へ投稿する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究として群作用をもつ測度距離空間の収束理論をほぼ完成させたが,これは一つの大きな成果であり,他大学の研究者にも興味をもっていただいている.今年度は順調に研究が進展したが,前年度に飛躍的に進展したので,総合的に見て当初の計画以上に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
一つの研究の方向性として,群作用をもつ測度距離空間の収束理論の応用について考察する.群作用をもつ距離空間の場合には,リーマン多様体の崩壊理論や基本群の研究に役立った.測度をもつ場合にも,リーマン幾何への何らかの応用の可能性が期待される. もう一つの研究計画として,Gromov-Hausdorff空間のコンパクト化についての研究を完成させて論文を執筆する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため,組織している研究集会,および参加予定の研究集会が開催されなかったため旅費の使用がなかった.
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