研究課題/領域番号 |
19K03464
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 伊南沙 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (60568161)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 曲面結び目 / 曲面ブレイド / チャート / 結び目群 / カンドル |
研究実績の概要 |
2019年度は、「分岐被覆曲面結び目」について、その単純化数の上からの評価を行うためのチャート変形について研究を行った。また、これまでに使用した変形操作では底を成している曲面結び目の情報は区別できていない変形を行っているので、「分岐被覆曲面結び目」を「分岐被覆曲面」と呼ぶことにした。既存の研究結果について資料収集を行い、それに基づきながら、単純化するためのチャートの新たな変形を模索した。 また、分岐被覆曲面結び目の中でも特にトーラスの被覆の形をしている「トーラス被覆結び目」について、その結び目群の表現についての研究を行った。ここで、結び目群とは結び目の補空間の基本群のことである。トーラス被覆結び目の結び目群について考察し、それの既約なメタベリアンSU(2)表現の数について、アレクサンダー行列との関係、さらにフォックスのP-彩色によるカンドル彩色数との関係を求め、プレプリントにまとめた。1次元の結び目群の既約なメタベリアンSU(2)表現の数について、アレクサンダー多項式からも定まるknot determinantとの関係についての先行研究があるが、トーラス被覆結び目の結び目群の表示と1次元結び目の結び目群の表示の類似性を用いて、1次元の場合の議論を使用することで得るころができた。 また、関連分野の研究集会に参加し、自身の結果を発表したり、情報収集を行なったりした。金沢大学・学習院大学合同トポロジーセミナーの世話人を務め、この科研費で遠方からの研究者を招待することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チャートの変形を模索したが、論文にまとめられるほど有効な新しい変形方法の発見には至らなかった。また、トーラス被覆結び目の結び目群の表現についてはプレプリントにまとめたが、議論が明確でない箇所があると指摘を受けたため、内容を再検討する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、トーラス被覆結び目の結び目群の既約なメタベリアンSU(2)表現の数について、プレプリントにまとめた内容の議論を改めて検討し、より明確かつ読みやすいように書き直す。トーラス被覆結び目のアレクサンダー加群についてもさらに考察を進める。 また、分岐被覆曲面の単純化数についても、チャートの変形方法を引き続き模索しつつ、単純化数を決定できる例についても候補を探す。単純化数の上からの評価は実際に単純化を行う方法で行う。下からの評価はカンドルコサイクル不変量を用いて評価できるのではないかと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大のため、世話人のひとりとして2020年3月に開催を予定していた国際研究集会および国内研究集会を中止した。そのため、講演者や参加者の旅費として支出を予定していた分が未使用額として残った。今年度の当該助成金は、専門書籍の購入などに使用する。また、可能であれば、研究集会参加のための旅費などに使用する。また、これも可能であれば、新型コロナウイルス感染症の感染状況を見極めながら、感染防止策を十分に講じたうえで、小規模なセミナーや研究集会開催費用として使用したいと考えている。
|