研究課題/領域番号 |
19K03465
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
田中 利史 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (60396851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リボン結び目 / 曲面 / 対称和 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,結び目の対称和の特徴づけ及び分類を行うことである。結び目の対称和は,1960年代から研究が盛んに行われている結び目コボルディズムの分野において重要な研究対象であるスライス結び目の例である。 3次元多様体の位相的研究において,内部の曲面の位置や幾何学的性質を用いて,多様体の位相的性質を特徴づけることは,基本的かつ重要な問題である。特に3次元球面内の結び目に対して,その補空間に埋め込まれた本質的曲面が存在するかを考察することは重要である。 当該年度は,まず対称和が合成結び目の場合の研究において,最小ねじれ数が1である場合に,ある非自明な結び目とその鏡像を連結和成分として含むという結果を,国際的査読有雑誌「Journal of Knot Theory and Its Ramifications」Vol. 28, No. 10, (2019)(2019年9月)に発表した。また,その結果については,韓国における国際研究集会で招待講演を行った。 一方で,最小ねじれ数が1である対称和に対して,それがサテライト結び目の場合に,その補空間に互いに平行でない圧縮不能トーラスが少なくとも2つ存在することを示し,さらにその結果を用いて,最小ねじれ数が2以上である対称和の存在を,結び目の双曲性を用いて示した。この結果については,2019年10月に大阪市立大学で行われた研究集会「トポロジーとコンピュータ2019」で研究発表を行った。また研究内容ついては論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は,まず対称和が合成結び目の場合の研究に関する結果を,国際的査読有雑誌「Journal of Knot Theory and Its Ramifications」Vol. 28, No. 10,(2019)(2019年9月)に発表することができた。また,最小ねじれ数が1である対称和に対して,それがサテライト結び目の場合に,その補空間に互いに平行でない圧縮不能トーラスが少なくとも2つ存在することを示し,最小ねじれ数が2以上である対称和の存在を結び目の双曲性を用いて示した。その結果について,2020年2月に韓国のKAISTで行われた国際研究集会「Knots and Spatial Graphs 2020」で研究発表をすることができた。また,この結果については論文にまとめ投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は,主に最小ねじれ数が1である対称和に対して,その補空間の球面やトーラスの性質を調べることで研究を行い,特徴づけを行うことができた。今後は一般の対称和についても,前年度の研究を発展させることにより,研究を推進したいと考える。 また,当初の研究計画に従って,今後の研究では,補空間のさまざまな曲面を用いた結び目の対称和の位相的性質についての研究も,曲面の特徴づけを行うことにより行っていきたいと考える。一方で,対称和はリボン円板と呼ばれる,リボン型特異点集合のみをもつ特異円板の境界となる。この特異曲面と結び目の補空間の曲面の交わりを考えることで,結び目の対称和の幾何学的性質の研究を行いたいと考えている。 2000年のLamm の論文で与えられた問題「すべてのリボン結び目は対称和であるか」を解決するためには,対称和の張るリボン円板の特殊性を精密に調べる必要がある。これについて関連する最新の論文等を参考にし,研究を進めていきたいと考える。 以上の研究から,本研究課題の核心をなす問題である「すべてのスライス結び目は対称和であるか。」について答えを得ることが目標である。
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