研究課題/領域番号 |
19K03466
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 進 神戸大学, 理学研究科, 教授 (90345009)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 曲面結び目 / 射影図 / 仮想結び目 / ねじれ多項式 / 交差多項式 |
研究実績の概要 |
4次元ユークリッド空間に埋め込まれた閉曲面を曲面結び目といい、3次元ユーリッド空間へ射影して得られる射影図を用いて表される。曲面結び目のすべての射影図にわたる3重点の個数の最小値をその曲面結び目の3重点数という。この不変量は古典結び目の交点数に対応する、曲面結び目の複雑さを表す重要な指標のひとつである。本研究の最終目標は射影図の性質を調べることで3重点数の研究につなげることである。射影図の自己交差集合の曲面結び目における逆像は、閉曲面にはめ込まれた円周の和であることから、曲面曲線とみなすことができる。 一方カウフマンによって導入された仮想結び目は、厚み付き閉曲面内の結び目として表現されることから、曲面結び目の射影図の研究につなげることができる。そこで本年度は仮想結び目の図式の性質を調べることにした。その結果、仮想結び目の3種類の新しい不変量を発見することができた。 研究ではまず、既知の不変量であるねじれ多項式の再定義を行った。閉曲面上の図式の各交点に1ーサイクルを対応させると、それらの閉曲面上での自己交差数をとることでねじれ多項式が与えられる。そこで次に1ーサイクルのペアに対して交差数を考えると、ライデマイスター変形IIおよびIIIで不変な多項式が得られる。これをねじれ多項式で補正することにより最終的に第一、二、三交差多項式とよばれる不変量を構成することに成功した。 研究では交差多項式の性質(対称性による変化や交点数の下からの評価、どのような多項式が交差多項式となりうるかという実現問題など)を調べ明らかにした。さらに応用として、これまでに未解決であったいくつかの問題を解決することができた。任意の仮想結び目の組に対しその連結和が無限個存在することを示し、また曲面曲線のホモトピー類の不変量の構成とその閉曲面の種数に関する評価などを与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
与えられた3重点数をもつ曲面結び目の射影図を調べるためには、その自己交差集合のリストを作成する必要がある。それらは三又コードをもつガウス図式で表現される。特に球面の埋め込みである2次元結び目に限定した場合、そのガウス図はある条件をみたす必要がある。その条件は仮想結び目の射影図の平面性から得られるため、仮想結び目の射影図を調べることは2次元結び目の研究に直結する。 本年度の研究では、射影図の平面性を与える1ーサイクル同士の交差数の性質に着目し、そこから仮想結び目の不変量の研究につなげることができた。特にガウス図から1ーサイクル同士の交差数を計算する方法を明らかにしたことにより、2次元結び目の自己交差集合の逆像の平面性に関する研究を大きく進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、2次元結び目の射影図の自己交差集合がみたすべき必要条件を明らかにすることができた。このことにより、与えられた3重点数をもつ2次元結び目の射影図の自己交差集合のリストの作成を進展させることができる。特に3重点数が5または6の2次元結び目の特徴付けを目標のひとつとして研究を進めていきたい。 また、自己交差集合が1本の2重点円周または1本の2重点線分の場合に、2次元結び目の射影図が3重点数に関して最小であるかどうかを調べることができると考えられる。この場合には理論上、自己交差集合が満たすべき必要「十分」条件を与えることができるはずであり、この点についても調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張ができなかったこと、および物品が当初予定していたより少し安く購入できたことなどにより繰り越しが生じた。本年度の予算と合わせて図書費・出張費などに用いる。
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