研究実績の概要 |
連続関数の拡張定理は、数学のみならず様々な分野において基本的な道具として使われている。特に選好理論においては、前順序の入った集合上の連続増加関数を用いるため、Nachbinの1965年の研究以来現在でも様々な研究結果が報告されている。本年度は、前順序の入った位相空間における連続増加関数の拡張について研究を進め、以下の結果を得た。 1.前順序の入った位相空間の部分空間上の有界な連続増加関数を全空間上へ拡張できるための必要十分条件は、部分空間上の順序完全分離できる互いに疎な集合は全空間上でも順序完全分離できることである. これは、位相空間におけるGillman-Jerison の古典的定理の一般化である。 2.上述の定理の応用として、前順序の入った位相空間の任意のコンパクト集合上の連続増加関数を全空間上に拡張できるための必要十分条件を与えた。この条件は, 選好理論において導入されていた性質と本質的に一致するものであることがわかった。 3.有界とは限らない連続増加関数の拡張について、位相空間におけるC-embedding に対応するいくつかの定理を与えた。有界な連続増加関数の場合と異なり、有界とは限らない一般の連続増加関数の拡張に関しては、現在までほとんど関連する研究報告が無かった。本研究では、位相空間論での拡張定理の単純な類似が成立しないことを示すいくつかの反例を与えた。特に、Frantzの境界を制御する拡張に関しては、増加関数の場合には類似の対応にはならないことがわかった。 以上の研究内容を論文としてまとめて投稿した。また、12月のジェネラルトポロジーシンポジウム、および、3月の日本数学会で研究成果を発表した。
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