研究実績の概要 |
次の2つの成果があった. (1)昨年2月から3月にかけてFields研究所に滞在した際に堀口達也氏とSong Jongbaek氏と始めた研究に,組合せ論研究者の John Shareshianが加わり,次の結果を得た.置換多面体は対称群の作用を持つが,その商空間は再び単純凸多面体となり,(組み合わせ的には)高次元の立方体である.対称群全体の商空間ではなく,対称群の中の幾つかの折り返しによって得られる部分群Gによる商空間も単純凸多面体となり,これに対応するトーリック軌道体がある.このトーリック軌道体のコホモロジー環が,置換多面体に対応するトーリック多様体(置換多様体)のコホモロジーのG不変環と同型であることを示した.この事実と,Balibanu-Crooksの結果を合わせて,h=(2,3,...,n,n)の場合の正則ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の具体的な記述が得られた. (2)Eunjeong Lee氏とSeonjeong Park氏との共同研究において,ある種のトーリックRichardson多様体(我々はこれをカタラン型と呼んでいる)の族と,多角形の分割とが対応することを見出した.これより,カタラン型のトーリックRichardson多様体の同型類の個数が,古くから知られているWedderburn-Etherington数に一致することが分かった.Wedderburn-Etherington数は,幾つかの対象の数え上げに現れるが,我々の研究は,それに新たな1つを加えたものでもある.
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