研究課題/領域番号 |
19K03475
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高倉 樹 中央大学, 理工学部, 教授 (30268974)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | シンプレクティック商 / 余随伴軌道 / ウェイト多様体 / ワイル群 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記したように、コンパクト単純リー群の余随伴軌道の族から直積・商などの操作により定まる空間のトポロジー・幾何についての研究を行った。具体的には、重複度多様体や多重ウェイト多様体のコホモロジー環の構造や位相型の特定について考察を行った。また同時に、上記の空間の代数的・組合せ的対応物である、リー群・リー環の既約表現の族からテンソル積・部分空間などの操作により得られる次数付きベクトル空間の構造についての研究を行った。それは各種の表現の分解の問題と深く関連し、ベクトル分割関数や、その連続版であるベクトル体積関数が重要な対象となる。 今年度はまず、昨年度に引き続き、一般のA型ベクトル体積関数の性質を考察した。その結果、nice chamber に対する体積関数を用いて上記の体積関数を表すことができるという B. V. Lidskii の定理が、ワイル群の作用から定まる基底の族に関する等式へと抽象化されることが判明した。ただし、ある多変数有理関数族の1次独立性の証明が一部未完のため、現時点では予想にとどまっている。 一方、Demazure 加群の指標を(Demazure の指標公式ではなく)Atiyah-Bott-Ding の公式を用いて表すことにより、ウェイトの重複度を調べることを試みた。今後はさらにこれを用いてアフィン・リー環の既約表現のウェイトの重複度の考察へとつなげたい。 また、昨年度に開始した、複素ウェイト多様体の複素的対応物についての研究(特に、定義体を有限体にしたときの点の個数と、有限体上の一般線形群の表現の重複度が等しいという予想)については、現在のところ、低階数での例証以外の進展は得られていない。引き続き今後の課題としたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、研究時間の確保や研究計画の遂行に大きな支障が生じた。特に、国内外の専門家との交流が十分にできなかったことは残念である。 研究実施計画欄に具体的な問題・目標としてとして挙げていたもののうち、「(1) 余随伴軌道に付随するシンプレクティック商の同形類の考察」については、昨年度と同様に、未解決の問題がいくつか残っている状態である。非アーベル商とアーベル商の間の対応関係については依然として解決への糸口を模索している段階にとどまっている。 一方、「(2) (1)の空間の不変量の計算と、その過程に現れる代数的・組合せ的構造の考察」については、これまでに得たA型ベクトル体積関数に関する結果を推し進めて、興味深い予想を得た。複素ウェイト多様体に関する予想も含めて、今後の進展に期待している。 「(3) (1)の空間の部分多様体の考察」については、依然として調査が中断したままである。引き続き、今後の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を踏まえつつ、「現在までの進捗状況」に記した具体的な問題・目標(1)(2)(3)について研究を継続する。ただし、検討すべき重要な項目として、「A型ベクトル体積関数の諸構造の考察」と「複素ウェイト多様体の諸構造の考察」を優先するつもりである。 研究方法についても前年度までと同様とするが、オンラインによる交流とともに対面での交流をより活発に行う予定である。 また、補助事業期間を延長したこともあり、これまでに得られた成果の発表を積極的に行いたいと考えている。また、文献・資料や情報の収集も継続し、検討項目を随時見直すことも重要視している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた国内出張・海外出張をすべて取り止めた。また、本務先のオンライン授業・ハイブリッド授業への対応などにより、研究時間の確保にも支障が生じた。次年度使用額は、国内外旅費として使用する予定である。
|