研究課題/領域番号 |
19K03476
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
井上 歩 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10610149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カンドル / 結び目 / 対称性 / 正則タイル貼り |
研究実績の概要 |
カンドルは結び目を研究する目的において優れた代数系である.また一方で,カンドルは対称性を記述する目的においても優秀である.図形が備える対称性全体には群の構造が定まる.これは良く知られた事実である.しかし考える対称性を一部の種類(例えば線対称のみ)に限定すると,その構造は一般には壊れてしまう.他方で,対称性全体にはカンドルの構造も定まり,その構造は考える対称性を制限しても壊れることはない.これはカンドルの優位点と言える.具体的な対称性を記述するカンドルを選び,そのカンドルを用いて結び目を研究することで,結び目が備える構造とその対称性との関連性が見いだせるはずである.このような考えに基づき,本年度は次のような研究を行った. 合同な正三角形を各頂まわりに丁度m個ずつ集まるように配置することを考える.これはmが3・4・5のときはそれぞれ正四・八・二十面体をなし,mが6のときは平面を隙間無く埋め尽くす.またmが7以上の場合は,双曲平面と呼ばれる空間を隙間無く埋め尽くす.この配置は,構成から明らかなように,各頂点を中心とする2π/m回転対称性を備えている.この回転対称がなすカンドルをシュレフリカンドルと呼ぶ.Niebrzydowski・Przytycki両氏による先行研究に考察を加えることにより,mを無限に飛ばして得られるシュレフリカンドルの極限は,trefoilという結び目の結び目カンドル(結び目に対して定まるカンドル)と一致することが分かる.この関係性と対比して,trefoilからある手法によって得られるm-twist-spun trefoilという結び目の結びカンドルが(同じmに関する)シュレフリカンドルの中心拡大と呼ばれるものになっていることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンドルが記述する対称性と結び目が備える構造との関係性を研究することは,本研究の課題の一つである.「研究実績の概要」に記載した研究成果は,m-twist-spun trefoilの結び目カンドルが,その極限がtrefoilの結び目カンドルに一致するような,2π/m回転対称性がなすカンドルと密接な関係を持つことを意味している.これはm-twist-spun trefoilとtrefoilとの関係性を良く記述しているように思われ,本研究の目標を一つ達成したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
(今後の研究の都合上)具体的に述べることは控えるが,本年度は結び目が備える種々の構造に関する先行研究を学び,知識の拡充にも努めた.最終年度にあたる次年度では,蓄えた知識を本研究の課題に活かせないか色々な観点から検討し,柔軟に研究を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 感染拡大に伴って,当初計画していた研究打ち合わせ等をすべてオンラインで行ったため,計画との差異が生じた.次年度も同様の事態は想定されるが,オンラインでの研究打ち合わせ等を円滑に進めるためのPC周辺機器や,知識拡充のための資料収集などに有効活用する.
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